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製造業の「稼ぐ力」の向上を目指してー2024年版ものづくり白書から

2024年版ものづくり白書では、CX(コーポレート・トランスフォーメーション)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)の取組を中心に紹介しています。2024年5月に公開された2024年版ものづくり白書のポイントを解説します。

2024年版ものづくり白書とは?

日本経済において、製造業はGDPの約2割を占め、中心的な役割を担っている産業の一つです。

昨今、日本の製造業は、国内投資の重要性が高まっている一方、足元では売上の過半を海外市場で稼ぐ構造へと変化しています。しかし、グローバルで幅広いビジネスを展開しながらも、利益率は欧米に比して低水準です。また、事業活動を支えるDXも個別工程のカイゼンにとどまっている事例が多いのが現状です。そのため、事業実態に適した経営の仕組みが整っているのか、日本企業の取組はうまく「稼ぐ力の向上」につなげられているのか、といった懸念が挙げられます。

こうした現状を踏まえ、2024年版ものづくり白書では、日本の製造業の更なる「稼ぐ力」を向上することを目指し、CXによるグローバルな事業活動に適した経営・組織の仕組み化や、DXによる製造機能の全体最適化、事業機会の拡大といった取組に着目しました。

経営・組織の仕組み化を図るCX

リーマンショック以降、日系主要製造業の海外売上比率は大きく増加しており、その売上の過半を海外で稼ぐ構造にまで変化しています。こうしたことから、製造業事業者にとっては、グローバル規模でのビジネス展開が主要な成長戦略となっていることがうかがえます。一方で、純利益率は継続的に上昇してきているものの、依然として米欧よりも数ポイント低い状況です。

図1:主要日米欧製造業企業の海外売上比率

資料:Refinitivより(株)NTTデータ作成(2024年版ものづくり白書)

このような利益率の低さの要因の1つとして、ビジネスのグローバル展開に伴う経営の複雑性の高まりが挙げられます。国・地域ごとに現地法人を立ち上げることで、組織ごとに設備や機能を重複して所有することになり、その結果、規模が拡大した企業グループを上手くマネジメントできていないことが、日本の「稼ぐ力」に影響しているのではないかと考えられます。

今後、日本の製造業が、経営の複雑性を乗り越え、グローバルで「稼ぐ力」を強化するためには、海外現地法人を含めた経営資源の最大・最適な活用に向けて、日本と海外現地法人という形で分断された構造を脱却し、多数の組織の集合体である企業グループがまるで1つの組織であるかのように振る舞う状態(=グローバル・ワンカンパニー)を目指すことが求められます。その上で、経営資源配分を司るファイナンス、HR、DX/ITといった3つのコア機能の変革を、グローバルで横串を通して進めることが必要となります。

図2:ヒト・モノ・カネ・データに関わる共通基盤の整備

資料:経済産業省作成(2024年版ものづくり白書)

DXによる製造機能の全体最適と事業機会の拡大

労働力不足や水平分業化、製品の多様化、GXなどといった製造業を取り巻く環境やビジネスモデルの変化に対応するために、製造業における個社、そして産業規模でのDXは喫緊の課題です。

製造業の個社におけるDXに目を向けると、依然として「個別工程のカイゼン」に関する取組が多く、「製造機能の全体最適」や「事業機会の拡大」を目指すようなDXの取組は少ないのが実態です。

図3:DXの取組領域別推進状況

資料:(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構「5G等の活用による製造業のダイナミック・ケイパビリティ強化に向けた研究開発事業/製造現場のダイナミック・ケイパビリティ強化施策と今後の普及に係る調査事業」にて実施したアンケートから経済産業省作成(2024年版ものづくり白書)

今後、「製造機能の全体最適」を実現していくためには、経営戦略の遂行を可能とするデジタル戦略を描くとともに、製造現場の業務プロセスの全体像を熟知した上でのデジタル実装が必要です。また、「事業機会の拡大」に向けては、アフターサービス等のサブスクリプションサービスの展開など、「モノを作って売る」だけではない、ものづくりにおけるビジネスモデルの変革も求められています。

さらに、近年、欧州の自動車サプライチェーンを中心に、個社や業界を超え、産業規模でデータを共有し、競争力強化を図る取組(例:Catena-X)が進行しています。一方、日本では、ウラノス・エコシステム(Ouranos Ecosystem)等の取組において、業界横断のデータ連携が開始しているものの、産業データ連携への参加意向については、「参加したい」と回答した割合がわずかに留まっています。

図4:産業データ連携への参加意向

資料:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「令和5年度製造基盤技術実態等調査(我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査)報告書」(2024年版ものづくり白書)

今後、日本における産業データ連携の取組を加速させるためには、個別企業にとっての具体的なメリットを示していくことが求められています。

製造業の「稼ぐ力」の向上のためには何が必要か――

本白書では、日本の製造事業者がより一層の「稼ぐ力」をつけていくための有効な取組として、CXとDXを取り上げました。これからも、日本の製造業が積み上げてきた強みを活かしながら、国内・グローバル問わず大いに活躍していただきたいと考えています。

ここで紹介しきれなかった分析も数多くありますので、ぜひ一度、2024年版ものづくり白書の全文をご覧ください。

製造産業局 製造産業戦略企画室

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