主流はネット通販? 〜おせちから考える食品流通①〜
2024年も早や半ばが過ぎ、「ふるさと納税」のサイトではもう、来年のお正月用のおせち料理の返礼品が並んでいた。
そこで、今回は4部構成で、おせち料理を通して、食品流通について見ていく。
ただでさえ多い年末の宅配だが…
年の瀬である師走は、クリスマスや歳末のセールの出荷やお正月準備商品の配送など、一年の中でも宅配貨物の運送量の多い月である。第3次産業活動指数で宅配貨物運送業指数の推移をみてみる。
まず、年平均をみると、指数は年々増加傾向で推移してきており、特に2020年はコロナ禍での「巣ごもり需要」により通販、特にECサイトで購入する「ネット通販」(「BtoC-EC」。以下、「EC」という。)が一気に拡大したことで大きく増加し、その傾向が2年続いていたところ、2023年は減少しているものの、依然として高い水準で推移している。
次に、各年12月の指数値(原指数)をみると、年平均と比較して3~4割程度高くなっている。要因としてお歳暮やクリスマス、歳末セール、お正月準備商品などの配送が考えられるが、近年、この12月の取扱量を押し上げているものの一つとして通販おせちが挙げられる。
2021年にEC業者が実施したおせちに関する調査によると、「おせちをどこで用意したか」の回答は、「スーパーで購入」が多い中、翌年のおせちの予定では、「ネット通販で購入」の回答が「スーパーで購入」を大きく超えた。
食品は、店頭で直接商品を見て選ぶことが好まれるため、物販全体と比較してEC化が遅れており、「物販全体」のEC化率が2022年で9.1%であるのに対し、「食品、飲料、酒類」のEC化率は4.2%とまだ低い水準である。ところが、写真を見て予約するおせちは、食品の中でもEC向きの商品といえ、2023年正月向けにおいては、EC化率40%越えを達成した百貨店(注)があるなど、EC化が一層進んでいる状況だ。
(注:日本食糧新聞社「EC化率4%台からの展望 食のデジタルシフトはどこまで進むか」ダイヤモンド・チェーンストア・オンライン2023年10月3日掲載
冷凍のおせちは、冷凍技術の発達によって冷蔵ものとそん色なくなっており、より広域に、より自由な配達日時で発送できるので、今後も冷凍ものを使った通販のおせちは、おせち市場に占める割合を高めていきそうだ。
写真で選んで届くのを待つ通販は、手軽で便利だが、師走の市場やデパ地下まで出掛けておせち料理を買い求める、昔ながらの光景がなくなりつつあるのは、少し寂しく、伝統的な食材を使ったおせち料理という食文化は、廃れずに残っていって欲しいものだ。
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