METI解体新書

アフリカに大注目!ビジネスと資源確保を両輪で

【アフリカ室/鉱物資源課】
橋本 雅拓(左):通商政策局 中東アフリカ課 アフリカ室。室の司令塔である総括業務と南部アフリカ地域を担当。

岸 紗理奈(中央):資源エネルギー庁 資源・燃料部 鉱物資源課。資源確保戦略に関する業務を担当。企業から出向。

延時 大夢(右):資源エネルギー庁 資源・燃料部 鉱物資源課。資源確保戦略に関する業務を担当。中部経済産業局から出向。

日本とアフリカの経済的な関係を深める

――― 今回はアフリカでの産業政策と資源確保を両輪で進める3名に話を伺います。まず、アフリカ室のミッションと担当業務を教えてください。

橋本:日本企業がアフリカでビジネスをしやすいように、ビジネス環境を整備することが私たちのミッションです。アフリカは、デジタル技術活用の進展やスタートアップの急成長など、ポテンシャルがとても高く、更なるビジネス展開に向けて注目されています。私は特に南アフリカ地域(南アフリカ共和国、ナミビア、アンゴラ、ザンビア、ボツワナ、ジンバブエ、モザンビーク)が担当で、多国間(マルチ)、二国間(バイ)それぞれの関係を大事にしながら、経済やビジネスに関する関係づくりを進めています。

――― アフリカと日本のビジネスにおける関係は。

橋本:2023年8月に、経済産業大臣が日本の閣僚として初めて訪問する国も含めアフリカ5か国(ナミビア、アンゴラ、コンゴ民主共和国、ザンビア、マダガスカル)を訪問し、各地で投資協定や共同声明などが結ばれました。アンゴラには複数のスタートアップ企業を含む20社以上の企業が、ザンビアには複数の鉱物関係企業が同行し、鉱物資源確保のための政府間関係強化やビジネス関係の強化を図っています。2025年には日本が主導する国際会議TICAD(Tokyo International Conference on African Development)開催もあり、注目が集まっています。

――― 日本のスタートアップ企業や企業がアフリカに関心を寄せるのはなぜですか。

橋本:アフリカは若い人口も多く、これから市場規模がどんどん大きくなることが見込まれています。さらに、社会課題の解決に関するビジネスチャンスが非常に多いのです。例えば、マラリアの発生に対して、衛星で蚊が発生しそうな地域を特定し薬剤を散布するドローンを飛ばすという事業があります。こういった、デジタル技術を活用して社会課題を解決するビジネスは、日本や先進国よりアフリカの方が実現しやすい。このようなスタートアップ企業の動きを後押しするため、私たちアフリカ室では、アフリカ各国で様々な社会課題解決につながるビジネスモデルの検証・発信(AfDX事業)を行っています。

アフリカビジネスの可能性について語る、アフリカ室 橋本さん

重要性が高まる鉱物資源を確保する

――― 鉱物資源課のお二人に伺います。そもそも鉱物資源とは。

岸:鉱物資源は、あらゆる工業製品の原材料として、国民生活及び経済活動を支える重要な資源です。日本では、ベースメタル(鉄、アルミ、銅、鉛、亜鉛等)や金・銀に加え、ニッケル、コバルト、レアアース、白金族などのいわゆるレアメタルが様々な産業で使用されています。

延時:私も2年前に着任するまでは全く知りませんでしたが、実はすごく身近にあるものです。パソコンやスマートフォンの液晶、中に入っている基盤なども、原料は鉱物資源。自動車のモーターにもレアアースが使われていますし、リチウム・ニッケル・コバルトは、蓄電池に使われています。世界中で再エネや電動車(EV、FCVなど)の導入が急速に進んでいますが、こうした分野においても鉱物資源は欠かすことのできない資源となっており、需要はますます高まりを見せています。

――― 鉱物資源とアフリカはどう関係があるのでしょうか。

延時:日本は、ベースメタル、レアメタルのいずれについても、ほぼ全量を海外からの輸入に頼っている状況で、2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、鉱物資源を安定的に確保するための取り組みがより一層必要です。鉱物資源の安定供給の確保に向けては、様々な課題があります。特に多くの鉱物資源のサプライチェーンが特定の国に依存していることは、日本が強靱なサプライチェーンを構築していくための大きな課題となっています。生産国の偏りだけでなく、製錬という加工工程についても、特定の国に偏っていることがサプライチェーン上の大きな特徴です。日本としては、サプライチェーンの各工程において、鉱物資源の安定供給上のリスクがないか検証するとともに、各工程の多様化を進めていくことが必要です。

こうしたサプライチェーンの強靱化・多様化に向けた取り組みとして、資源外交を展開していますが、日本企業が進出している南米のチリやペルー、豪州、カナダなどの国に加え、新たなフロンティアとしてアフリカに着目しています。

鉱物資源の生産・製錬・輸入に関する国・地域別の割合(IEA、ITC、JOGMECのデータベース等を基に経済産業省作成)

――― 鉱物資源を確保する観点でアフリカは重要地域なのですね。

延時:橋本さんから、ビジネス上でのポテンシャルが高いという話がありましたが、鉱物資源のポテンシャルも高いのです。我々としては、特にナミビア、ザンビア、コンゴ民主共和国に注力しています。前述の経済産業大臣のアフリカ訪問では、ナミビアでレアアースのサプライチェーン構築に合意、コンゴ民主共和国で新たにリチウムの探査協力に合意しました。ザンビアでは、JOGMEC(独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構)がザンビア全土で探査協力に合意、鉱物関係の官民ミッションを派遣するなど、鉱物資源確保のための政府間関係強化や、ビジネス関係の強化を図りました。また、経済産業大臣のアフリカ訪問前後には、これらの国の大臣を日本に招聘し、大臣間の会談、日本企業の皆さんに向けて、これらの国々の投資環境を知ってもらうためのセミナーなども開催しています。

鉱物資源確保の重要性について語る、鉱物資源課 延時さん

国の将来を賭けたダイナミックな仕事

――― 担当業務についてどのような思いで取り組んでいますか。

岸:私はEV向けにリチウムイオン電池などを生産するパナソニック エナジーという会社から2023年4月に今の課に着任しました。着任前は、自社のバッテリーに使う鉱物であるコバルトの調達を担当していました。今は、自分の会社だけではなく、日本全体の鉱物資源確保を担当しており、その違いは感じます。注目度の高い、スケールが大きな仕事ですし、着任して初めて、資源確保に関する各国の動き・政策を意識しました。

企業と国、両方の立場を経験してみて思うのは、海外からの鉱物資源の確保においては、企業単独だと動きづらいこともあり、官民で連携していくことが大事だということです。経済産業省では、外交的な働きかけの他、JOGMECと協力をし、企業へ投資機会のプロモーションなども行っています。こういった機会を知らない方も多いと思うので、どんどん伝えていかなければと思っています。

国の政策や動きを伝えていきたいと語る、鉱物資源課 岸さん

延時:私は経済産業省の地方支分部局である中部経済産業局から出向で本省に来ています。今の仕事では、海外全体を俯瞰し、資源外交に携われていることに非常にやりがいを感じています。

日本が議長国を務めた2023年のG7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合では、クリーンエネルギーへの移転と経済安全保障を両立するために、G7各国が協調して取り組むべきアクションプランを5つにまとめた「重要鉱物セキュリティのための5ポイントプラン」が合意されました。日本として、G7における重要鉱物サプライチェーンの強靱化に向けた議論をリードしてきたことが、G7という国際的な会合で文書として残るということは、すごく大きなことですし、やりがいを感じました。

橋本:2050年にアフリカの人口は世界の1/4になると言われています。それに伴って、経済的にも市場の中心がだんだんとアフリカに向かっていくことが予測されます。こうした背景もあり、日本企業にもっとアフリカ市場について認知をしてもらいたいと思っています。なぜアフリカ進出を推進するのか、自分の中で改めて考えると、1つは重要鉱物の話。経済安全保障を守るために国と国の関係を作ること。もう1つは将来的な日本の経済力の強化。この2つがあると思っています。国の将来を賭けた仕事をやっていると思うと、すごくやりがいがあるなと感じます。

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