統計は語る

EVかHVか。米国の販売事情を見る

これまで「電気自動車(EV)」に対する注目が次第に高まってきていた中にあって、最近、再び注目を集めている「ハイブリッド自動車(HV)」について、これまでの「自動車」の国内生産や輸出の動向を振り返りつつ、日本からの最大の輸出市場である米国における最近の状況を確認していく。

※「電気自動車(EV)」とは、「電気の力でモーターを駆動させて走行する自動車」である。また、「ハイブリッド自動車(HV)」とは、「走行状況に応じて2つ以上の動力源を同時又は別々に使用して走行する自動車」である。また、「プラグイン・ハイブリッド車(PHV)」とは、「外部からの充電が可能なハイブリッド自動車」である。

日本国内における自動車の生産の動向と輸出の動向

まず、「自動車工業」と「普通乗用車」について、国内生産の動向を鉱工業生産指数で確認すると、2020年3~4月頃から本格化した新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、「自動車工業」の生産は、一時的に急低下した後、急速に回復したことが分かる。

また、2021年8~9月頃のアジアを中心とした新型コロナウイルス感染症の再拡大などによる部材供給不足の影響を受けて、再び急低下した後、急速に回復したことが分かる。

しかしながら、新型コロナ感染症の拡大期間を通して、2022年春頃までは、日本国内においては、半導体を中心とした部材調達不足の影響などを受けて、「自動車工業」の生産は、低下基調にあった。

その後は、半導体を中心とした部材調達不足の影響が次第に緩和してきたことなどを受けて、2023年の年末までには、概ね新型コロナウイルス感染症が拡大する前の水準にまで回復してきていた。

また、「普通乗用車」について見てみると、概ね「自動車工業」と同様の動きとなっており、「自動車工業」全体が、「普通乗用車」の動向の影響を受けていたものと考えられる。

他方で、貿易統計により、日本からの乗用車の輸出の動向を見てみると、概ね「普通乗用車」や「自動車工業」の国内生産と同様の動きとなっていることから、国内で生産された「普通乗用車」は、この期間において、国内出荷と海外輸出のそれぞれの割合が概ね安定して推移していたことが伺える。

このことから、この期間において、自動車市場は、総じて内需と外需はともに堅調であり、部材調達不足などによる供給側の要因の影響を強く受けていたと考えられる。

なお、足下では、認証手続の不正や大雪の影響などにより、「自動車工業」や「普通乗用車」の生産が急速に低下しており、今後の回復の動向に注視していく必要がある。

注1:輸出台数の季節調整は、経済産業省独自の計算

米国における自動車の販売動向 -「ハイブリッド自動車」と「電気自動車」の比較-

次に、調査会社マークラインズにより、米国における自動車の販売の動向について見てみると、2020年3~4月頃から本格化した新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、一時的に低下した後、電気自動車は、概ね同じようなペースで2023年夏頃まで上昇してきた一方で、ハイブリッド自動車は、2021年春頃までは相対的に堅調に回復・上昇してきていたが、その後2023年春頃まで概ね横ばいで推移した後に、再び上昇傾向にあることが分かる。

また、2022年6月に、月次ベースの販売台数では、電気自動車がハイブリッド自動車を上回った後、2023年3月に再びハイブリッド自動車が電気自動車を上回るまで、相対的に、電気自動車の方が堅調であったものの、その後は両者が概ね同様のペースで上昇してきていたが、足下では再び、ハイブリッド自動車の方が相対的に堅調な動きとなっていると見受けられる。

なお、プラグイン・ハイブリッド車(PHV)については、2020年3~4月頃から本格化した新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて低下した後、緩やかではあるが、着実に上昇してきていることが確認できる。

他方で、貿易統計により、日本から米国への自動車の輸出動向を見てみると、電気自動車の輸出は、2022年末頃からプラグイン・ハイブリッド自動車と並ぶ規模にまで拡大してきているものの、その規模は相対的に小さく限定的である一方で、ハイブリッド自動車の輸出については、上昇基調で堅調に推移してきていることが分かる。

このことから、米国市場では、他国からの輸入もあるので一概には言えないものの、米国産の電気自動車の販売が堅調であることと、日本産のハイブリッド自動車の販売も堅調であることが伺える。

注2:アメリカの自動車販売台数は、乗用車と小型トラックの計としている。

まとめ

今回は、米国市場における「ハイブリッド自動車」と「電気自動車」に焦点をあてて、日本で生産された自動車の輸出動向について、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に係る日本の自動車の生産動向にも触れながら、最新の状況を確認してきた。

その結果、米国市場においては、「ハイブリッド自動車」と「電気自動車」が、2020年春の新型コロナウイルス感染症の拡大以降、新たな競争(ライバル)関係を構築しつつあり、足下まで激しいデッドヒートを繰り広げている一端を垣間見ることができた。

なお、足下の状況から見ると、今後、米国市場において両者のどちらが相対的に高い地位を築いていくのかについて、はっきりとした見通しを行うことは困難であり、先行きの動向が気になる。

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