インスタントラーメン支出は西低、東高だった
鉱工業指数から見えてくる生産の実情
戦後に誕生したインスタントラーメンは、いまや大勢の人に愛されている食品と言えるだろう。そんなインスタントラーメンが即席麺類として、鉱工業指数の2015年基準で新たに品目として採用された。即席麺類の生産動向が、国内製造業の動きに影響力を持つようになったことの結果である。ということで、即席麺類の生産指数の動きとともに、支出や生産工場立地の都道府県別の違いについて紹介する。
即席麺類の生産は、国民一人が週1回食べられる計算
即席麺類(カップ麺、袋麺の鉱工業指数での品目名称)は、2017年こそ前年比マイナスとなったが、この5年間、増産傾向で堅調に推移しており、2017年の生産量は約42万トンとなった。この数字は、2016年10月時点での日本の20歳以上人口が約1億511万人であることから、1食75gで換算すると、年間52食、つまり成人が週に1度食べられるだけの即席麺類が生産されている計算になる。
即席麺類の生産指数の動きをグラフにすると下のようになる。ほぼ横ばい推移の食料品・たばこ工業に比べ、2013年から2015年までは即席麺類の生産には勢いがあった。それ以降は、食料品全体の動きと似たような動きとなっている。
支出トップは青森、少ない京都
では即席麺類の支出はどうなっているだろうか。世帯ごとの家計支出を調査する家計調査では、全国の値とは別に地域ごとの値として、各都道府県の県庁所在地ごとの支出結果を公表している。これを用いて、地域ごとの2017年の即席麺類への1世帯当たり年間の支出額をみてみる。
全国平均では年間5,163円を即席麺類に支出している計算となるが、最も支出の多い青森では6,982円、反対に最も支出の少ない京都では3,667円と、全国値を挟んで対比する形となっている。最大金額と最小金額で、年間3000円以上の支出額に「開き」があるというのは、意外ではないだろうか。
この結果を地図に落とし込むと、上述のグラフで1位、2位であった青森や秋田を筆頭に、全体的には西日本よりも東日本、特に北海道・東北地方で支出が多い様子がうかがえる。「東高」「西低」といったところだろうか。
では、工場立地はどうなっているだろうか。工業統計調査の都道府県別算出事業所数を地図に落とし込んだのが以下の図となる。 即席麺類のような身近な食材の製造拠点は、全国に万遍なく存在していそうな感じもするが、実は、47都道府県のうち、15県と3分の1近くの県には、即席麺類の工場が存在しない(2016年6月1日現在)。
また、工場の出荷規模を考慮していないので、厳密な比較とはいかないが、工場立地は支出が多い地域に立地しているかというと、必ずしもそうとはいえないようだ。もちろん、比較的支出の多い地域でもある北海道、東北地方(の日本海側)、そして北関東に比較的工場が多いのも確か。しかし、即席麺類の工場数が多いのは、北海道と、むしろ本州の中央地域の太平洋側や近畿地方であるということが見て取れる。
即席麺類への支出が多い、北海道と愛知県に工場が多いのは理解しやすいところだが、さらに興味深いのは、静岡県と兵庫県だ。この2県は、即席麺類への支出額がむしろ少ない方の県だが、即席麺類の生産工場の所在数が多くなっている。工場の立地には、需要地への距離だけではなく、原材料の入手のしやすさ、交通アクセス、労働者確保など様々な理由があるので、この兵庫と静岡の即席麺類工場の数については確たる理由は分からないが、支出額と工場立地を地図にプロットしてみて分かる興味深い事実である。
どうだろうか。即席麺類はある時期にその生産額が伸び、鉱工業指数に最新の産業構造を反映させる基準改定によって、今回初めて鉱工業指数の採用品目となった。鉱工業の変動に比べて、即席麺類の生産は伸びている。
鉱工業指数は、こうした身近な財に生じた変化も織り込みながら日本の生産活動の活況度合いを推し量る指標として、日々活用されている。
鉱工業指数の基準改定については、改定概要資料を参照いただきたい。