統計は語る

理容業と美容業。回復に差がついた理由

4月からの新生活に向けて、理容室や美容室で髪を整える予定の方も多いのではないだろうか。

理容業・美容業は新型コロナウイルス感染症の影響により、大きく落ちこんだ業種の一つといえる。コロナ禍を乗り越え、理容業・美容業はどのように変化しただろうか。理容業・美容業の現状をみていく。

理容業は早い回復、美容業は回復に遅れ

理容業の第3次産業活動指数(以下、指数という。)は、2018年から2019年にかけて上昇していたが、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、低下した。その後の回復は早く、2021年初めには、コロナ禍前の水準となり、その後も上下はあるものの、概ねコロナ禍前の水準となっている。

理容室の主な利用客である男性は、短髪のヘアスタイルが多く、これを維持するため、コロナ禍においてもこまめに理容室に通うケースが多くあったことが想定される。また、近年のツーブロックなどのクラシカルなヘアスタイルの流行により、刈り上げの技術を得意とする理容室を利用する客が増えていることが考えられる。

さらに、アパレルブランド店内やバーに理容室が併設されるなど、新形態の理容室が増えているようだ。

一方、美容業の指数は、わずかに低下を続けていたが、2020年には、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、大きく低下した。美容室は、女性の利用客が多く、ロングのヘアスタイルの場合には、ショートのヘアスタイルと比較して、髪を切る頻度は少なくて済むと考えられることから、コロナ禍においては美容室に通う頻度を下げたことが考えられる。また、施術が長時間となるパーマネントは、感染予防の観点から施術を受ける頻度を下げたことが想定される。

アフターコロナにおける美容業の指数をみてみると、コロナ禍前の水準には戻っていない。美容業の回復が遅れているのはなぜだろうか。

家庭でのヘアケアが充実

家計調査により、2015年から2023年における理美容代、ヘアケア製品の年間支出をみていく。カット代は2021年以降増加する一方、パーマネント代は、減少を続けている。2000年代の巻き髪ブームは去り、最近では本来の髪を活かした自然体の髪型が主流となっていることが理由の一つと考えられる。一方、ヘアケア製品の支出は増加傾向にある。

続いて、商業動態統計で家電大型専門店における生活家電の販売額を確認すると、2023年における家事家電、調理家電、季節家電の販売額が減少する一方、ドライヤーやヘアアイロン、散髪器具などを含む理美容家電の販売額は増加していることが分かる。近年の高価格帯ドライヤーなどの高性能理美容家電の流行により、家庭でのケアを充実させることで美を保つことも可能となってきているようだ。コロナ禍においては、ヘアケア製品や理美容家電を用いた家庭におけるケアを習慣とし、アフターコロナにおいても、これを継続しているケースもあると考えられる。

美容業は、施術単価の高いパーマネントの減少や高機能美容家電やヘアケア製品による家庭内ケアの充実などにより、アフターコロナにおける回復が遅れていることが想定される。今後は、美容室ならではの施術メニューが回復のカギとなっていくだろう。

新形態の理容室や、高機能、高価格帯美容家電が流行する一方、低価格、短時間でカットを行う理容室・美容室も存在感を示す中、理容業・美容業の状況は変化していくことが予想される。また、理容業・美容業は髪型の流行の影響も大きく受けると考えられる。今後も注目していく。


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理容業・美容業の今