統計は語る

大きく降下した9月の全産業活動指数

自然災害などの変動要因の影響度合いは

前年同月比では19カ月ぶりのマイナス

 2018年9月の全産業活動指数は、前月比マイナス0.9%と2か月ぶりの低下、指数値は104.7となった。
 先月8月はやや大きめの上昇だったが、それを上回る大きな低下幅だった。ここ4か月で3度目のマイナスとなり、指数値はこの4か月でマイナス1.7ポイント低下、結果、昨年4月以降では最も低い水準にまで急降下している。
 なお、前年同月比は、昨年2月以来、実に19か月ぶりに低下となった。

 上の図で傾向値(後方3か月移動平均値)の推移をみると、6月にそれまでの上昇傾向からマイナス方向へ転じた。以降は、やや強めのペースでの下降という様相になっている。
 2018年第3四半期の全産業活動指数は、前期比マイナス0.8%と2期ぶりの低下、指数値は105.2となった。第2四半期は、四半期ベースではリーマンショック以降初めてとなる106台という高い水準に到達したが、そこから大きく後退した。

サービス産業活動の低下が大きく影響

 9月の結果を産業別にみると、建設業活動と鉱工業生産はともに前月比マイナス0.4%の低下、サービス産業活動が前月比マイナス1.1%の低下と、3活動すべてが低下となった。先月は3活動すべてが上昇だったが、いずれも前月の上昇幅と同等以上の低下幅となっている。
 なお、全産業活動の前月比マイナス0.9%の低下うち、マイナス0.8%ほどがサービス産業活動の低下インパクトによるもので、サービス産業活動の動きが非常に強く影響した。

 2018年第3四半期では、3活動すべてが2期ぶりの前期比マイナスだった。鉱工業生産、建設業活動が前期比1%を超える低下で、第2四半期の前期比上昇幅を超える低下幅だった。

9月の動きの「主役」を分析してみると

 9月の全産業活動の前月比低下には、サービス産業活動の不調が強く影響した。このところサービス産業活動が全産業活動の動きの主役となることが多くなっている。
 一方で、この9月は自然災害といった突発的な事象があり、様々な事業や消費行動に影響を与えたと考えられる。また特異的な事象という意味では、今年7月にも酷暑、豪雨といった事象があった。このため、7月と8月、あるいは8月と9月といった単月毎の活動量の関係が、過去の経験値とは異なったものとなっている可能性がある。
 そこで、サービス産業活動について、今月9月までの最新の指数値を加味した季節調整済指数値を再計算(公表値は、昨年12月までの指数値から予測推定された季節指数を用いて季節調整済指数を計算している)し、その構成要素である傾向・循環変動と不規則変動を抽出し、最近の不規則変動についてみてみた。この不規則変動に、天候不順などの突発的な変動要因が含まれている、ということになる。
 方法は、第3次産業活動指数の11大分類業種毎に、今年9月までの指数値を使って季節調整済指数とその成分を再計算し、抽出された成分別に11大分類業種の加重平均を行い、サービス産業活動全体の各成分を計算した。再計算にはX12-ARIMAを用い、投入するスペックは、業種毎に今基準で用いられているものを使用している。
 なお、季節調整指数値には、今年6月以降の公表値と再計算値で大きな差異はなかった(下図参照、2018年1月以前の再計算値は参考値)ので、新旧のかい離は無視して、以降の解説をする。

 まず目につくのは、傾向・循環変動が、今年6月以降、等しいペースで緩やかに下降している点である。
 そして、不規則変動は、①今年7月と9月がマイナス方向、8月はプラス方向に出ている、②8月のプラス方向変動幅の方が9月のマイナス方向変動幅よりも若干大きくなっている、③7月、8月、9月各月分を過去の同月と比べると、それぞれ今年の不規則変動はかなり大きくなっている、などがみてとれる。
 9月の前月比大幅低下の要因をこれら成分で説明すると、不規則変動が8月のプラス方向変動幅の方が9月のマイナス方向変動幅よりも若干大きくなっていることから、9月の前月比大幅低下の最大の要因は8月の活動活発化の反動、次に9月固有の低下要因であり、それに緩やかなペースの低下傾向要因が加わったものということになる。
 不規則変動に含まれる要素は、自然災害など誰の目にも明らかな突発的事象だけではないが、あえて不規則変動の動き・大きさと、過去3か月の突発的事象等を当てはめてみると、①7月は酷暑と豪雨という2つに事象の効果がある程度相殺された(経済解析室ニュース:7月分の全産業活動指数参照)、②し好的な個人向けサービスを中心に夏休み需要、行楽需要が8月に集中した(経済解析室ニュース:8月分の全産業活動指数参照)、③9月は前月の反動に加え自然災害の影響もあり低下幅は大きくなった、ということが一つの解釈として成り立つのではないだろうか。

2018年9月の全産業活動の基調は下方修正

 2018年9月の内訳3活動はいずれも低下した。各指数の基調判断は、鉱工業生産は「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と、判断を据え置いている。他方、サービス産業活動は「足踏みがみられる」に下方修正している。建設業活動は、依然として「弱含みの動き」が続いている。

 全産業活動全体では、9月単月としては大幅な前月比低下で、指数値は104台後半まで一気に下降した。このほか、当月の特徴として①前年同月比が久方ぶりにマイナス、②第3四半期の前期比低下、③3か月移動平均で測る「すう勢」には弱さがみられる、などネガティブな側面も挙げられる。
 各活動の動きをみると、いずれの活動も前月比、前期比ともに低下だった。
 ただ、今年7~9月には、酷暑や自然災害といった複数の突発的な事象があり、この期間の指数値には少なからず、これらスポット的事象の影響を受けているものと考えられる。このところの動きには、この点を割り引いてみる必要があるものと思われる。
 このような状況を踏まえ、今年9月の全産業活動は、「緩やかな持ち直しの動きにあるが、このところ足踏みがみられる」に半歩ほど下方修正されている。

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