少子化でどうなる? 学習塾のこれから
厚生労働省の人口動態統計をみると、2022年の国内における出生数は前年比約5.0%減の約77万人となり、少子化が止まらない。少子化が加速する中、子どもへの教育事情はどのように変化してきたのか。今回は、学習塾に着目してみていく。
人口減少が続くものの、学習塾のニーズは高い
学習塾の経年変化を第3次産業活動指数のうち、受講生徒数に基づき作成される「学習塾指数」でみていく。
まず、主に学習塾を利用する年齢である6歳から18歳までの人口の推移を総務省の人口推計で確認すると、棒グラフのとおり減少を続けている。一方、学習塾指数は、2014年から2018年までは増加を続けていたが2020年には新型コロナウイルス感染症の影響により大きく落ち込んだ。これは、新年度生集客の重要時期である1~3月に新型コロナウイルス感染症が拡大し、入塾の判断材料となる春期講習会への参加の見送りなどにより、新規生徒獲得が困難であったことが要因として考えられる。
その後、翌年2021年には2014年の水準まで回復し、2022年は若干の減少となっている。人口減少の続く中、2020年には落ち込みをみせたものの、翌年には新型コロナウイルス感染症以前の水準には届かないものの、高い水準まで回復したことは、社会の状況変化に関わらず、学習塾のニーズは高く、学習塾も世の中の変化に応じたサービスの提供を行っていることが考えられる。
気になるのは、2023年はまた下落傾向に戻る結果になっている点であり、少子化の影響が現れているように見える。
学習塾売上高は増加傾向
続いて、特定サービス産業動態統計から学習塾の売上高及び受講生一人あたりの学習塾売上高を指数化した推移をみてみると、売上高指数は2020年を除き、おおむね増加傾向で推移しており、一人あたりの学習塾売上高指数も2016年以降増加を続けている。
受講生徒数を示す「学習塾指数」の低下傾向に関わらず、売上高指数は堅調にあり、さらに一人あたりの学習塾売上高指数も2016年以降増加を続けていることが分かった。つまり、受講生の減少傾向を受講料の値上げにより売上高を確保し、人材を確保している姿が見える。
コロナ禍において、学習塾側は感染対策を講じた上での対面授業、オンライン授業への切り替えなどの受講方法の選択肢拡大を行った。中には、オンライン授業専門校舎が誕生するケースもあり、遠方の生徒やこれまで通塾距離や時間の関係から受講を諦めていた生徒を取り込むことも可能となるなど、サービスの充実が売上高の増加に繋がったと考えられる。
また、受講生一人あたりの学習塾売上高の増加は、首都圏における2023年私立・国立中学入試において過去最高の受験者数となるなど中学受験過熱による単価の高い中学受験塾の受講料や集団指導と受講料単価の高い個別指導を併用するケースなどが要因かと考えられる。
学習塾は可能な限り学ぶ機会の提供を続けることで、生徒は混乱する世の中にあっても受験などの一大イベントに向け、各々に合う学習方法を選択し、学びを続けるケースも多くあったことが分かる。刻々と状況が変化していく中、学習塾側も生徒側も試行錯誤しながら学びを諦めずに継続させたことだろう。
止まらない少子化の中、学習塾には一層の教育内容やサービスの充実が求められていくことが想定される。小中学生の給食代の無償化、高校生の授業料の実質無償化など子育て世代への政府からの支援策を受けて、子供を持つ世帯の支出が学習塾を始めとした教育産業にどのように影響していくのだろうか。今後も注目していく。
(本解説に関する注意事項)
本解説は、公に入手可能で、経済産業省経済解析室が信頼できると判断した情報を用いて作成している。ただし、使用した情報を全て、個別に検証しているものではないため、これらの情報が全て、完全かつ正確であることを保証するものではない。
また、本解説は、統計などの利活用促進を目的に、経済解析室の分析、見解を示したものであり、経済産業省を代表した見解ではない。