統計は語る

活字離れは本当か?出版業界の今

読書の秋だが、皆さん、最近本を読んだだろうか。街では書店の閉店が目立ち、電車内でも本や新聞を読んでいる人は減り、今やみんなスマホを触っている。 「活字離れ」が進んでいると言われている昨今だが、現状はどうなっているのか。今回は出版業界の動向をみてみる。

出版業は下落傾向にありつつも、市場規模は維持

第3次産業活動指数から「出版業」指数および「新聞業」指数の推移を見ると、近年下落傾向にある。特に、スマートフォンの登場により、2008年以降に急落していることが読み取れる。 次に、出版業の内訳の推移を見ると、週刊誌や月刊誌は、休・廃刊の増加に伴い大幅に下落している一方で、書籍は比較的緩やかに下落している。 また、出版市場の推移を見ると、紙出版は年々縮小傾向にあるものの、電子出版が伸びており、市場規模全体としては世の中で「活字離れ」と言われているほど落ちてはおらず、横ばいに推移していると言える。

電子出版、特にコミック市場が好調

では、出版業界を支えている電子出版市場の内訳をさらに見てみよう。電子出版市場の約8割をコミックが占めているが、2020年以降さらに占有率が拡大し、2022年には全体の約9割をコミックが占めている。この背景として、コロナ禍の巣ごもり需要の影響が考えられる。また、コミック市場推定販売金額の推移より、2019年を境に電子コミックが紙コミックの販売金額を抜き、紙から電子への移行が進んでいることが読み取れる。

消えゆく街の書店、進む大型店舗化

最後に総書店数および書店面積の推移を見ていく。書店数は年々縮小傾向にあり、20年前の約6割程度まで減少している。週刊誌や月刊誌の販売が芳しくなく、コミックも紙から電子出版への代替から中小書店の経営を圧迫したのが原因かと考えられる。一方、全店舗の坪数計は減少しているものの、1店舗あたり坪数は増加しており、中小書店と大手書店で明暗を分ける状況にあるようだ。また、最近では無人書店など新たな形態の書店も登場してきている。

まとめ

このように、紙出版や書店数の減少など縮小傾向にあるものの、電子出版市場は、本の朗読を聞けるオーディオブックなどの新たなサービスもあり、今後も拡大することが予想される。 書店での本との偶然の出会いはオンラインショップではなかなか経験ができない。リアル書店の逆風に立ち向かう力にも期待する。

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活字離れは本当か?