「肌男」は美容関連産業のけん引役か
男性用化粧品は未踏のフロンティア
ずいぶん気温も落ち着き、関東ではようやく過ごしやすい季節になってきた。季節の変わり目には、ファッションだけでなくスキンケアやメイクも変えるという方も多いのではないだろうか。今回は、美容に関する産業を総合的に見るために経済解析室が試算した「ビューティー・ビジネス・インデックス(BBI)」の平成29年の結果から見えてきたことを紹介する。
美理容サービスは低調も
上のグラフは、BBIとその内訳系列である「製造(生産)業」「流通業」「サービス業」の指数推移を示したものである。
BBIの指数水準は96.9、試算開始から低下が続いていたが、初めて前年比3.0%上昇した。
内訳3業態を見ると、サービス業とともに低下基調が続いていた流通業が初めて上昇へ転じた。製造業は前年比10.8%となり、2014年から4年連続の上昇と好調さが見てとれる。
BBIの前年比3.0%上昇に対する影響度合い(寄与)は、製造業が2.9%ポイント、次いで流通業が1.1%ポイントの上昇寄与と、製造業の影響力が圧倒的に大きかったようだ。他方、サービス業はマイナス1.1%ポイントの低下寄与と、全体の動きの重石となっている。
美容関連サービス業指数は、サービス(第3次)産業活動指数の美容業、理容業の両指数から作成されている。美容に関連するグッズの生産、流通に勢いがある一方で、美理容サービスは低調な動きである。
わずか4年で急上昇
では、美容関連製造業の「なに」が好調だったのだろうか。
上のグラフは、美容関連製造業の前年比伸び率に対する、内訳3分類(石鹸類、化粧品類、衣料品類)の影響度合いを示したものである。製造業が前年比上昇となった直近4年間を見ると、石鹸類と化粧品類の上昇寄与が続いている。特に化粧品類の寄与が大きく、2013年の指数水準は95.0だったが、2017年には132.1と、たった4年で約4割も生産水準が上昇し、過去最高水準を更新している。
他方、衣料品類だけは低下トレンドが続いており、全てが好調というわけではなかった。
(関連記事:「ファッションのトレンドは、モード・コーデからスキンケアへ;衣料品と化粧品の生産推移を比較する」)
この衣料品類と比較して、化粧品類が好調さを示しているが、その背景には、インバウンド(や海外需要)と男性向けの拡大があるという印象がありそうだ。
そこで、男性(皮膚)用化粧品の出荷動向を確認してみよう。
意外?男性用化粧品の出荷額は減っている
上のグラフは、生産動態統計調査(経済産業省)より、皮膚用化粧品全体と、そのうち男性皮膚用化粧品(以下男性用)の生産量(左)と出荷額(右)の推移とその割合を示したもの。
皮膚用化粧品全体に占める男性用の割合をみると、実は、2017年の男性用の生産量は皮膚用化粧品のうち9.2%、出荷額では皮膚用化粧品のうち2.5%しか占めていない。数量と出荷額の構成比に大きな違いがあり、男性用は、むしろ平均的な皮膚用化粧品よりも低価格となっていることが分かる。
また、推移を比較すると、皮膚用化粧品全体は、おおむね右肩上がりの好調な推移となっているが、男性用は、意外にも、横ばい推移、むしろ2015年以降は低下傾向と言えなくもない。
美肌ケアに意を払う男子の「肌男」という言葉を耳にする機会も多くなったが、男性用皮膚化粧品の出荷に占める存在感はまだまだなようである。
ということは、むしろ、美容関連産業の中で順調に伸びている化粧品生産には、まだ「男性用」という未踏の領域が残っているという解釈もできるのかもしれない。