政策特集進化するコネクテッドインダストリーズ vol.10

データの不正利用を防げ!

国レベルでルールを検討


 人、機械、企業などあらゆるものをデータを介して“つなげる”ことで、新たな価値を生み出す経済産業省の新戦略「コネクテッド・インダストリーズ(CI)」。最重要要素ともいえるデータの利活用を加速するため、経産省は制度整備を急ぐ。特にデータに関する不正や紛争を防ぐのは、国の大きな役目だ。誰もが安心してデータ提供できる高度なIoT(モノのインターネット)社会の実現に向け、経産省の取り組みに注目が集まる。

きちんとしたルールがないと…

 2月、政府はデータ利活用促進を目的に、不正競争防止法の改正案を閣議決定した。「契約に基づく自由な取引が前提だが、他方で、きちんとしたルールがないとデータの提供を躊躇するという声もある」。経産省の幹部は、法改正の意義をこう説明する。改正案ではデータの盗用など悪質な行為を、差し止め請求をはじめ民事措置の対象とする。不正への抑止力を高め、データ流通を活性化させることが目的だ。

 実際、サイバーセキュリティー問題が顕在化する中、データに関する不正への対応は産業界の新たな課題だ。船の位置や速度といったデータを事業者間で共用する仕組みを運営する企業からは、「不正アクセスには細心の注意が必要。今まで無法状態だったデータの世界がルール化されることは大変ありがたい」との声が聞かれる。

 不正競争防止法の改正案では、データの盗用、正当取得データの悪質な外部提供といった行為や、不正データであることを知って取得した第三者などを規制対象とする。これに合わせ経産省は、対象範囲を事業者が判別しやすくするため、ガイドラインも設ける方針だ。

「制度を運用しながら、制度自体も見直す」

 無論、変化が激しいだけに不確定要素もあり、政策が100%成功するとは限らない。また、他国に先駆けたデータ流通ルールとなる不正競争防止法の改正案に対し、慎重意見も存在する。

 ただ、新時代の主導権をめぐり国際競争が激化する今、国レベルでの大胆な変革は待ったなしだ。経産省で同法を担当する諸永裕一知的財産政策室長は、不確定要素や慎重論の存在を認めつつ、「今回の制度は、安心してデータ取引が行えるような環境整備に向けて、特に悪質性の高い行為への対抗手段を設けるというもの。技術進展やデータ取引の実態の変化が起こる中、制度を運用しながら必要に応じて制度自体も見直す」としている。

 第4次産業革命への期待と危機感が高まる中、CIというスローガンが行政にチャレンジを促す駆動源となっているならば、一つの大きな成果と言える。