ロボット社会実装の切り札“ロボフレ✕施設管理” 成果報告会に参加してみた
私たちの生活に自動車が一気に普及したのは、高い性能の自動車が開発されただけでなく、その自動車が走る車道があわせて整備されたから。同じように、私たちの身の回りにロボットが普及するために必要なのは、ロボットの性能だけでなく、ロボットが活躍するための環境です。
施設管理や小売、物流倉庫といったサービス業界に押し寄せる人手不足の波の中で、ロボットの導入による作業の自動化や省人化のニーズが高まっています。そこで、経済産業省が取り組んでいるのが、ロボットを導入しやすい“ロボットフレンドリー(ロボフレ)”環境の推進です。3月8日に開催した令和4年度成果報告会では、搬送ロボットや清掃ロボットなどをオフィスビルで円滑に利用するための実証研究の結果を発表。経済産業省の安田篤・ロボット政策室長は、「ロボットの性能だけに頼らず、ロボットフレンドリーな環境を、ユーザーとメーカーが一体で作っていくことが重要」と話します。
ロボフレ施設推進法人を新設、産業界主導で
ロボフレ環境の普及加速を推進するのが、2022年に発足した一般社団法人ロボットフレンドリー施設推進機構(RFA)。ディベロッパーなどのユーザー企業とロボットメーカーらが協力・主導して、ロボフレ環境の構築を推進しています。
テーマの1つが、ロボットとエレベーターとの連携。オフィスビル内へのロボット導入には、ロボットがエレベーターに乗るための通信環境が欠かせません。今回の報告会では、ロボットが複数メーカー製のエレベータと通信して乗り込み、オフィスワーカーにランチや飲み物を配送する取り組みが報告されました。
また、ロボットが導入しやすいオフィスビルの要件定義。例えるならば、バリアフリーのロボット版です。光の反射や段差の高さなど、ロボットの動作に影響を与える物理的要件を特定し、ロボットが動きやすい水準を検証しています。
物理的要件に加えて、運用方法も重要です。道路標識のように、ロボットが周囲の状況を認識できる環境づくりです。例えば、曲がり角にマーカーを配置してそれを人やロボットが認識することで、お互いの接触が避けることができます。
さらに、1つのビルで複数のロボットが働く環境も見据えています。複数のロボットの導線が重なる場合にロボット同士の接触や干渉を避けるためのルールや制御方法を決める取り組みも進めています。
目指すは標準化
RFAでは、これらの重要テーマそれぞれで必要な規格を定めることで、ロボフレ環境の実現を通じたロボットの社会実装を加速しようとしており、すでに、ロボットとエレベータの通信連携の規格をリリースしています。RFAの脇谷勉・代表理事は、最大の課題は「レトロフィット」だと話します。「規格に沿って新しくオフィスビルを作ることは難しくありません。むしろ意識しているのは、既存のビルが後からでも対応できるような規格作りです。導入のコストや技術的ハードルが低く、それでいて安全性への配慮も十分、そんなバランスの取れたロボフレ環境の整備を進めることで、2030年までにはロボットと人間が共生する社会を実現させたい。そうすることで、日本のロボット産業の競争力確保にもつながると考えています。」
【関連情報】
複数のオフィスビル・ホテルでロボットフレンドリーな環境の実現に向けた新たな取組や実装が実現しました(経済産業省ニュースリリース)
RFAコンセプトムービー「人とロボットが共存する世界」
経済産業省 広報室