デジタル技術を活用し、アジアで社会課題を解決する「アジアDX企業」をご紹介!
新興国インドからヘルスケア変革に挑む「富士フイルム」
経済産業省では、国内大企業・スタートアップ企業が、アジアの企業等と連携し、デジタル技術を活用して社会課題を解決するための新産業創造「アジアDX」を推進しています。世界で活躍する「アジアDX企業」を複数回に分け、不定期に紹介していきます!
かつて写真フィルムのトップメーカーであった富士フイルム。今や事業内容の約3割をヘルスケア部門が占める「トータルヘルスケアカンパニー」である同社が、新興国インドを拠点に、ヘルスケアに変革をもたらそうとしています。
写真フィルムメーカーのDNAと自己変革が塗り替えるヘルスケアの常識
世界では、AI技術を持つ企業がヘルスケア産業に積極的に参入することで、医療におけるワークフローを劇的に改善し、かつ医療マンパワーが不足する国・地域においても一定の医療水準を担保する動きが加速しています。
2023年1月、ムンバイに3拠点目を構えた富士フイルムの健診センター「NURA(ニューラ)」は、がん検診を中心とする健診センターです。その最たる特長は、一貫してAIをベースとするワークフロー。それを支えるのは、高精細な診断画像を提供するマンモグラフィーなど、写真フィルムメーカーに端を発する富士フイルムだからこそ培ってきた技術を集約した医療機器です。
徹底したAI化は正確かつ素早い検査・結果報告を可能とし、例えば肺がん検診において、通常の検査と比較して所要時間の97%削減を可能にしました。また、2021年2月のサービス開始以降、医師が見つけられなかった小さな早期疾患を、AIの検出により発見できた例が多く報告されています。
NURAを支える最新技術と新興国のシナジー
NURAは先進国でも類を見ないような先駆的な健診センターですが、その拠点を新興国インドに構えたのはなぜでしょうか。
同社によると、新興国におけるがん罹患者の生存率は先進国と比べて低く、中でもインドはがん罹患者の5年生存率が約3割とされています。生存率向上のためには、定期検診による早期発見と早期治療が重要ですが、新興国では健診の文化も定着しておらず、がん検診サービスを提供する施設が少ないのが現状とのことです。
インドをはじめとする新興国にその拠点を置き、リーズナブルで上質な健診サービスを提供し、合わせて健診の重要性を様々な場面で訴求することにより、健診のニーズを喚起し、文化にまで醸成していくことで、疾病の早期発見・治療の促進を通じた死亡率の低減や健康増進を実現し、社会課題解決に貢献することができます。
また新興国においては、AIによる診断支援を医師が受けることに対し受容性が高く、NURAを展開する意義があります。富士フイルムは、将来的にアジア以外にアフリカなどの新興地域にもNURAを展開し、100施設の開設を目指しています。
アジアDXの挑戦を政府も応援
経済産業省では、国内大企業・スタートアップ企業が、アジアの企業等と連携し、デジタル技術を活用して社会課題を解決するための新産業を創造する「アジアDX」企業を支援しています。
富士フイルムでは、AI技術を活用した画像診断支援機能を用いた検診の効率性や正確性の検証など、NURA事業の立ち上げや展開に必要な様々な実証事業を実施しています。一連の実証事業の一部に対し、経済産業省は、令和元年度「アジアDX促進事業」や令和3年度補正「インド太平洋地域サプライチェーン強靱化事業」として採択しました。詳しくは、経済産業省アジアDXプロジェクトページをご参照ください。
【関連情報】
経済産業省アジアDXプロジェクト
ジェトロDXポータル 実証事業(パイロットプロジェクト支援)による支援
インド太平洋地域サプラーチェン強靱化事業
富士フイルム