素材産業界のGXを強力に推し進める!
【金属課、素材産業課】
経済産業省という複雑な組織を「解体」して、個々の部署が実施している具体的な政策について、現場の中堅・若手職員が分かりやすく説明する「METI解体新書」。
第15回は、素材産業界のGX(グリーントランスフォーメーション)を担当する、製造産業局 金属課の小野礼二郎さん、素材産業課の荒井将司さんに話を聞きました。
脱炭素化に向けた生産プロセスの変換へ
――― お二人の局・課はどんな政策を行っていますか?
荒井:製造産業局は、自動車、航空機、産業機械や、鉄、化学などの素材を含めた製造業界の成長戦略に加え、補助金、税制、環境規制などを担当する部局です。私が所属する素材産業課は、化学、紙パルプ、セメント、ガラスなど、生活に身近な製品素材を扱う産業界を担当していて、その中でも私はGX(グリーントランスフォーメーション)を含む、競争力強化に向けた企画を行っています。
小野:私が所属する金属課では、鉄やアルミ、銅などの鉄・非鉄産業を担当しており、業界の成長戦略や研究開発支援を行っています。私は総括担当として、課内の各担当が行っている業務のとりまとめを行っていますが、金属業界のGXについても、今後具体的に何を進めていくのか、必要な分析を行っています。
――― お二人はそれぞれの業界のGXを担当しているんですね。業界ではどんな課題を抱えているのでしょうか?
小野:実は産業部門で最もCO2を排出しているのは鉄鋼です。鉄鉱石から鉄を生産する際、炭素が必要不可欠ということもありますし、生産工程において化石由来の電力も使います。鉄鋼業界での脱炭素化を進めるためには、生産工程を全く別のものにする必要があることが大きな課題です。
荒井:化学も同じです。プラスチックを作るときには、原油が原料なので、使用後に燃やすとCO2を排出しますし、当然電気も多く使います。これまでとは異なる生産工程にするにも、その技術が確立されていないため、全く違う視点で考える必要があります。それでいて、できあがる製品は同じ品質以上を求められる。業界が努力されているので、こちらもしっかり後押しをしなければなりません。
脱炭素化と成長の両立。カギとなるのは新技術の確立と国際標準化
――― GXは国と業界の二人三脚で進めていく必要がありますね。
小野:業界とは同じ方向を向いて一緒に頑張っていきましょうという雰囲気があります。CO2を減らさないといけないけれど、企業も成長をしなければならない、その両立が難しいところです。産業界のGXを進めていくためにも、引き続き、業界とはしっかりと話をしていく必要があると思っています。
荒井:ビジネスとして回していくための環境を国もしっかり作っていく必要があります。現段階では具体的な内容を詰めているところですが、昨年末にGX全体の方向性が発表されたので、それをもとに今後産業ごとに細かいことを決めていくことになるかと思います。
小野:素材産業分野での大きな方向性としては二つあり、一つは脱炭素化に向けた技術を確立していくこと、もう一つは国際的な基準作りです。一つ目については、今後GXを進めていくにあたり、生産プロセスは変わりますがプロダクトは変わりません。必要な設備投資や研究開発を進めていきながら、脱炭素化に向けた技術を確立する必要があります。二つ目については、脱炭素化製品の測定方法や定義の確立を行うことで、新しい製品が適切に評価される環境づくりが必要です。
身近な製品の裏側に業界の努力。国は最大限の支援を
――― 課題も多い中、仕事をしていてやりがいを感じるのはどんな時ですか?
小野:経産省に入ったからには業界支援に携わりたいと思っていましたが、今のポストに着任してそれが叶いました。産業界との距離感が近く、やりがいがあります。GXに関しても、どのくらいの規模の支援をすると、その結果どれくらい業界の脱炭素化が進められたか、世の中にどう還元されたかがわかりやすいため、産業界の成長に貢献できたという実感が湧きます。
荒井:業界の方に直接ありがとうと言われることはやはり嬉しいです。自分が頑張ったことで業界の方に喜んでもらえると、それがやりがいに繋がります。時には、経産省側が考えていることと、業界側で考えている道筋が違っていたり、ギャップがあってぶつかることもあります。でも、結果的にそれが良い政策へと結びつくこともあるし、国として進めるべき方針をしっかり持った上で議論していることは、業界の方も理解した上で話してくださるので、とてもありがたいです。
――― 今の仕事を通じて、世の中の人に伝えたいことはありますか?
荒井:皆さんの身の回りにあるプラスチックは、とても便利で生活を豊かにしてくれる物ですが、原料に原油が使われていますし、使用後も捨ててしまえば燃やす際にCO2が出てしまいます。プラスチックの脱炭素化を進めるためには、まず原料を変えて、生産過程ではグリーンエネルギーを使い、リサイクルもしなければならない。どこか一カ所だけ変えれば済むという話ではないため、脱炭素化は当然簡単ではありません。皆さんがプラスチックを手に取り、使用することはこれからも変わらないと思いますが、その裏で業界の方々が努力していることまで想像してもらいたいですし、地球温暖化対策を考えるきっかけにしてもらえたらと思います。
小野:鉄は、人の半径1メートル以内に必ず存在していると言われていて、物理的にも経済的にも世の中を支えているものです。それだけ大事な物なのに、産業界の中では一番CO2を多く排出しているため、悪者にされがちです。業界の方は、まさに乾いた雑巾を絞るが如く、より良いものをつくるために常に努力されています。その努力を知っていただきたいし、こちらも頑張っている方々を最大限支援していきたいと思っています。
――― 休日は何をして過ごしていますか?
荒井:数年前から筋トレをしていて、今も週に4、5回はトレーニングをしています。ジムに行く時間も惜しいので、自宅にトレーニングルームを作っちゃいました。休日は子どもが参加している少年野球のコーチをしています。
小野:ランニングが好きで、ハーフマラソン大会に出場しています。時間があれば走りに行き、アプリ上に走行距離が積み上がっていくのを見て楽しんでいます。休日は山登りもしていて、トレラン(登山道をランニングすること)も始めました。学生時代から陸上競技をしていたのですが、荒井さんのような無酸素運動より有酸素運動の方が好きですね。
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