政策特集宇宙視点のビジネスを 広がる衛星データ活用 vol.2

衛星データを無料で楽しむ!Tellus(テルース)の実力を知る

「衛星データは使える!」と言われても、すぐにはピンと来ないかもしれない。ただ、衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」をのぞいてみれば、印象はがらりと変わってくる。

Tellusには2022年12月時点、21種類の衛星データが搭載されている。ビジネスや学術研究で活用される一方で、無料で利用できるデータも多く、興味本位で眺めるだけでも、結構楽しい。実際のデータを使って、どんなことができるのかを試すことも可能だ。

百聞は一見にしかず。いざ、Tellusの世界へ―――  

Tellusとは何か? 衛星データを誰でも利用可能に

衛星データは長い間、主に研究目的で利用されてきた背景があり、一般の人には縁遠い存在だった。さまざまな組織がバラバラに保有していて、ファイルサイズは大きいうえに、生データは画像のゆがみや雲の影響など様々な要素を補正する必要があった。扱うためには、高性能のパソコンや専用ソフトウェア、そして、専門知識が求められた。

世界的に衛星データビジネスが活発化する中で、日本でも多くの人が気軽に衛星データを利用できるようにしようと、2019年に運用を始めたのがTellusである。ローマ神話に登場する「大地の女神」にちなみ、命名された。経済産業省からの委託を受け、クラウドサービスなどを展開する「さくらインターネット」が開発・運営する。これまでに3万人超が登録している 。

クラウド環境で楽々操作。豊富な衛星データと分析ツールを用意

Tellusは、クラウド環境を利用しているため、自分のパソコンに衛星データをダウンロードしなくても操作できる。データの面倒な前処理も不要で、専用のソフトウェアを使わず、直感的な操作で地図上に衛星データを表示できる。

搭載しているデータは幅広い。地表で反射した光や放射する熱を測定する光学データ、自ら放った電波の反射などを観測する合成開口レーダー(SAR)データ、海面や標高に関するデータなどなど。政府系衛星のデータは原則無料で利用できるほか、民間5社が衛星データを販売している。地震の震度や台風、特定外来生物の出現状況、地域ごとの将来の人口試算などの地上データも用意されているので、各種データを組み合わせることで、分析を深められる。

Tellusにはこれらのようなデータだけではなく、衛星データ解析ツールも販売されている。公式ツールとしては、同一地点で異なる時点の衛星画像の変化を自動的に抽出する「Tellus-DEUCE」、地形の細かな動きを観測できる「TellusSAR」など無料で使えるものもある。

また、講習会やデータを使ったコンテストなどを開催しているほか、オウンドメディア「宙畑(そらばたけ)」では、Tellusの利用方法に関する解説記事や宇宙業界の最新ニュースを配信している。

使い方を覚える!Tellusの基礎の基礎

tellus テルース 使い方 解説 衛星 さくらインターネット データ

なにはともあれ、Tellusのトップページ(https://www.tellusxdp.com/ja/)から登録を済ます。「サービス」→「Tellus OS」とすると、地図が出現する。通常のマウス操作で、移動や拡大・縮小ができる。

画面左上の「マイラブラリ」→「データ」とすると、

tellus テルース 衛星 さくらインターネット データ

使えるデータの一覧が出てくる。

地図を東京周辺にしたうえで、「高解像光学 | ASNARO-1」の目玉マークを選び、「詳細」→「検索範囲を表示範囲に限定する」→「検索」とすると、さまざまなデータ候補が出てくる。

ここでは、一例として「20201105020130000_20201105142731154_AS1_D01_L1B」を選び、「表示」とする。東京スカイツリー周辺を見ることができる。

tellus テルース 衛星 さくらインターネット データ

画面左下の「キャプチャ」から、画像データをダウンロードできる。

別の衛星データと見比べてみる。
画面右上から「2画面分割」を選び、右側の画面に移ったうえで、「広域SAR | PALSAR-2」のデータを先ほどと同様にして読み込み、例として「ALOS2459242900-221124」を表示させる。

tellus テルース 衛星 さくらインターネット データ

左側の光学衛星による観測では、画像上部に伸びる影が映りこんでいる。右側のSAR衛星は電波による観測で、やや暗く映るが、昼夜にかかわらず、同じような画像が取得できる。

植生の分布状況や活性度を示した「植生マップ」も簡単に見ることができる。

「マイライブラリ」から、「高解像光学|ALOS-3相当データ」を選ぶ。「alos3-pseudo_ortho_10300100537c4f00」というデータを選択して、「表示レイヤー」の「描画設定」で「バンド組み合わせ」を「NDVI」に変更する。

ここで選んだのは福岡市付近の画像。緑であるほど植生が活発であることが分かる。時系列の変化をたどることで、都市の開発具合や田畑の収穫時期の見極めなどに利用できる。

「Tellus OS」のほかにも「Tellus Traveler」でもTellusに搭載されている衛星データを検索・閲覧することができる。また、有償の衛星データの購入も可能。

地理情報システムQGISとの連携あれこれ。講習会は随時開催

さくらインターネットは随時、Tellusの講習会を開催している。筆者もオープンソースの地理情報システム(QGIS)と連携させた使い方も学んで作ってみた。プログラミングの知識がなくても、かなりのことができた。

さくらインターネット 経済産業省 テルース 衛星データ Tellus 講習会

2022年12月に開かれたTellus講習会

2019年に台風により浸水被害を受けた長野新幹線車両センター(長野市)で、PALSAR-2というSAR衛星データを取得。

このままではよく分からないので、ここで一工夫。災害前の画像を赤、災害後の画像を青と緑にして、2枚を重ね合わせる。

衛星から発した電波は浸水した場所では、水により衛星側に返ってこない。浸水しなかった場所は光の3原色の原理から、赤と青・緑が加わることで、白く表示されるのに対し、浸水した場所だけが赤のままで表示される。

こうしたテクニックを利用したうえで、明るさや彩度などを調整したのがこちらの画像。赤い部分が浸水域と推定される。

 

「Tellus-DEUCE」は2時期の衛星画像の変化を自動抽出する。
岩手県陸前高田市で、東日本大震災の前後を比べた結果がこちら。

赤色が「変化している可能性が高い」、黄色は「変化している可能性がある」、緑色は「変化が起きていないと推測される」を意味する。

災害の被災範囲だけでなく、建物の建て替わり、都市開発の進展の把握などに応用できる。

「Tellus-VPL」は衛星データとAI画像認識技術を組み合わせ、駐車場となりうる用地を探す。「福岡市中心部」かつ「面積5000㎡以上」という条件付けした結果がこちら。

駐車場会社はこれを利用して、新規開拓のための用地交渉に取りかかれば、営業効率の向上が期待できる。

さくらインターネット事業開発本部クロスデータ事業部の菅谷智洋氏は「Tellusをまずはさわって、気になる場所を探し、衛星データではどのように見えるのか、あるいは、データに よる見え方の違いを体験してみてほしい。様々なデータを見比べると、疑問や発見が出てくる。そうした積み重ねが解析を深掘りしていくきっかけとなり、ビジネスアイデアの創出につながっていくでしょう」と話した。

【関連情報】

・Tellusウェブサイト:https://www.tellusxdp.com/ja/

・Tellusのオウンドメディア「宙畑」(https://sorabatake.jp/)で、衛星データや宇宙ビジネスについて学ぶ特にオススメの記事はこちら。
▽宇宙ビジネスとは~業界マップ、ビジネスモデル、注目企業・銘柄、市場規模~
▽衛星データのキホン~分かること、種類、頻度、解像度、活用事例
▽衛星データ活用事例別、ニーズを実現するために必要な衛星スペックと解析技術
▽衛星データ活用事例を総まとめ! あなたにおすすめの事例がきっとわかる!?