政策特集地域未来牽引企業 vol.6

品質の徹底、多品種少量生産を強みに

締結部品メーカーのミズキ


 ミズキ(神奈川県綾瀬市)は、精密ネジやシャフトなど締結部品の老舗メーカー。2019年5月に創業80周年を迎える。パナソニック、オリンパス、日本電産、スタンレー電気といった大手企業など国内外約70社と取引する。水木太一社長は「さまざまなお客さま、多様なニーズに対応できるのが当社の強み」と胸を張る。

2000種類以上に対応

 不良品ゼロを第一に納期徹底、環境対応といったニーズにも対応してきた。真ちゅうやステンレスなどのコイル材をそのまま製品に高精度加工できる技術を持つ。外径(太さ)0.6ミリ~12ミリメートル、2000種類以上の締結部品を多品種少量生産できる。

 こうした努力が実を結び受注は好調だ。現在、自動車用ヘッドランプ、デジタルカメラ、ハードディスク駆動装置(HDD)用などの精密ネジやシャフトを製造する。主要売り上げ構成率は自動車4割、カメラ3割、HDD2割となっている。

新工場稼働で生産能力拡大

 2017年12月には10億円を投じて建設した新本社工場が完成した。鉄骨2階建てで、延べ床面積3500平方メートル。手狭になった旧本社工場と山梨県都留市の山梨工場を統合し、ロボットや航空宇宙分野への進出などを視野に増産対応できる体制を整えた。

 生産能力は最大で従来比約3割増の月産1億3000本に引き上げられた。現状では稼働率7割を維持しており、顧客の急な発注にも対応できるように余力を持たせている。数値制御(NC)旋盤も導入し、協力工場に委託していた切削加工を内製化した。

 また、経済産業省・中小企業庁の「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金(ものづくり補助金)」を活用してネジの自動洗浄機を導入した。従来は脱脂するネジを手作業で洗浄機に投入していたが、重くて重労働だった。新型洗浄機はネジを自動洗浄し、洗い終わったネジを通い箱に詰めて自動で積み上げていく。

IoT導入を本格検討

 新工場への移転を機に、IoT(モノのインターネット)を活用した工場の見える化の検討を始めた。締結部品を生産する圧造機、転造機などの機械にセンサーを取り付け、稼働状況や機械の回転数、生産量などのデータを自動集計し、生産管理の日報などと連携させて一括管理する。

 集計したデータは本社工場内の事務所に設置したモニターに表示する計画だ。顧客から生産状況の問い合わせがあった場合でも営業担当者が表示を見て生産量を把握できる。故障が発生した際でも状況がすぐに分かるため早期復旧につながる。水木太一社長は「企業間の競争に勝つためにも半歩先を行くモノづくりを実現させたい」と意欲をみせる。

水木太一社長

 そこで社内でIoTを確立し、次の段階として協力工場とのネットワーク化に着手したい考えだ。中小企業によるIoTの導入実績が少ないことから、協力工場を含めて生産性の向上に役立てる。いずれは地元綾瀬市の企業に提供したい考えで「地域未来牽引企業に選ばれた企業として地元に恩返しできれば」(水木社長)と考えている。

 今後5年以内の短・中期は自動車を中心に事業展開し、続く5~10年の中・長期はロボット、航空宇宙分野に力を入れる。現在、ロボットは産業分野が主流だが、生活支援ロボットなどの普及に伴い関節などの機構部品の需要が増えるとみて取り込みを図る。飛行ロボット(ドローン)も輸送などの用途が拡大すると予測。そこで軽くて強い材質の加工技術を習得し、将来の受注に備える方針だ。

 そのため最新素材に関する技術動向を把握するため積極的にセミナー、勉強会に参加している。航空宇宙分野に使われる軽量なチタンの加工技術を磨くため、歯科用のインプラント加工も始めた。水木社長は「締結部品で社会に貢献するという企業方針は変わらないが、最新の技術動向をつかんでおくことが重要だ」と語る。

 設備や技術といったハード面に加え、経営理念の浸透など人づくりに関するソフト面の充実も図る。ミズキは「国内外からありがとうの言葉を集める」というスローガンを掲げている。事業を通じて「顧客から感謝と信頼を寄せられる企業になろう」というメッセージが込められている。こうした理念を社内により浸透させるため、新入社員向け冊子やポスターなどを通じて啓発に努める。39年の創業100周年を見据えて「社会に貢献できる企業」(水木社長)を目指し事業にまい進する。

【企業情報】
▽所在地=神奈川県綾瀬市小園717-14▽社長=水木太一氏▽創業=1939年5月▽売上高=10億3000万円(2017年5月期)