「COP27」開幕、その前に 昨年のCOP26を振り返る(後編)
※掲載内容は、2022年3月に資源エネルギー庁スペシャルコンテンツに掲載した記事を一部修正して再掲したものです。あらかじめご了承ください。
2022年11月6日から11月18日にかけて、エジプトのシャムエルシェイクで開かれる「COP27」。前回の記事『「COP27」開幕、その前に 昨年のCOP26を振り返る』(前編)では、COPとはそもそも何か、どんな交渉グループがあるかなどを改めてご紹介しましたが、後編では、「COP26」で決まったことの詳細と、日本がはたした役割についてお伝えしましょう。
「COP26」ではついに「パリ協定」のルールブックが完成
COP26では、政府関係者がパリ協定の実施に向けた具体的なルールを交渉しました。全体的なメッセージとして決定したのは、パリ協定でさだめられた「1.5℃努力目標」に向け、締約国に対し、今世紀半ばの「カーボンニュートラル」と、その経過点である2030年に向けた野心的な気候変動対策を求めるということです。
また、すべての国に対し、排出削減対策がおこなわれていない石炭火力発電のフェーズ・ダウンや非効率な化石燃料補助金からのフェーズ・アウトを含む努力を加速することなども決定文書に盛り込まれました。
「パリ協定」に関連した点でも、大きな動きがありました。「1.5℃努力目標」の達成に向けて、どのような方法や基準の下で各国が取り組みを進めていくかという議論を進めてきた中、最後まで残っていた重要な論点が、パリ協定の第6条に基づく「市場メカニズム」の実施指針です。
市場メカニズムとは、GHG(温室効果ガス)の排出削減をおこなった量を、「クレジット」として国際的に移転するしくみです。
クレジットを国際的に移転し、取引をおこなう場合には、統一されたルールの設定が必要となります。そこには、どのような条件のもとで取引が可能になるのか、どのように各国の温室効果ガス削減目標に活用できるのかといった調整も絡みます。ルールを策定するためには、全会一致の原則ですべてが賛同することが必要ですので、こうしたそれぞれの国の事情により、これまで合意が得られていませんでした。しかし、今回、ついに実施指針が合意に至り、パリ協定のルールブックがようやく完成したのです。
この合意には、日本が打開策のひとつとして提案していた「政府承認に基づく二重計上防止策」がルールとして盛り込まれました。COP27でも、この分野に関するより具体的な交渉が行われる予定です。
交渉以外の動き
COPは、こうした交渉の動きがメインですが、それ以外でも、様々な種類のイベントが広い会場の中で同時並行的に行われています。たとえば、専門家や担当者が集まり、個別的なテーマをひざ詰めで議論するセミナーのような場もあれば、首脳・閣僚が集まるような華々しい政治的なイベントもあり、さらには会場内外の若者・先住民などがありとあらゆる場所で声を上げて主張する場面もあります。加えて、一定の政策的な方向性の同志国を目指すイニシアチブの立ち上げなどもあります。COP26で立ち上げられた「グラスゴーブレイクスルー」という英国のイニシアチブも、こうした動きの1つです。
その他にも、会場には、各国のパビリオンスペースが設けられています。セミナーやイベントのみを開催する国や団体が多い中、日本が出展する「ジャパン・パビリオン」では、水素ガスタービン・CCUS・洋上風力・水素燃料電池・CO2を利用したコンクリートなど、様々な日本の先進技術を展示し、注目を集めました。
来年、日本はG7議長国を務めます。G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合に先立ち開催される今回のCOP27でも、日本として議論に貢献し、取組を世界に発信するなどにより、リーダーシップを発揮していきたいと思います。
専門的な話が多く、かつ同時並行的に様々な動きがあるため、全体像を理解するのが非常に難しいCOPですが、気候変動問題を一歩ずつでも解決へと導くために各国がどのような議論と交渉をおこなっているのか、引き続きご紹介していきたいと思いますので、COP27に向けてぜひみなさんもゆくえを追ってみてください。