統計は語る

8月の鉱工業生産は、電子部品・デバイス工業等が低下したものの、「生産は緩やかな持ち直しの動き」に引き上げ。

8月生産は3か月連続の前月比上昇

 2022年8月の鉱工業生産は、季節調整済指数99.5、前月比2.7%と、3か月連続の上昇となった。

 これまでの生産の動向については、2022年1月に、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症急拡大などの影響を受けて低下したが、2月と3月は、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症拡大等の影響が緩和したことなどを受けて、上昇した。

 その後、4月と5月は、中国でのロックダウン等の影響を受けて低下したが、6月に、中国でのロックダウン等の解除などを受けて上昇に転じ、7月は、部材供給不足の影響が緩和したことなどから、上昇した。

 こうした中、8月は、部材供給不足の影響の緩和が継続したことなどから、3か月連続で上昇した。

10業種が前月比上昇、5業種が前月比低下

 8月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、10業種が前月比上昇、5業種が前月比低下という結果だった。

 8月は、需要の減少などを受けて、電子部品・デバイス工業等が低下したものの、部材供給不足の影響が緩和したことなどを受けて、多くの業種が上昇したことから、全体として上昇した。


 上昇寄与度の最も大きかった生産用機械工業は、半導体製造装置やフラットパネル・ディスプレイ製造装置等が主な上昇要因となっている。半導体製造装置については、堅調な国内・海外需要などにより、フラットパネル・ディスプレイ製造装置については、海外向けに増加したことなどを受けて、上昇したものと考えられる。

 他方で、低下寄与度の最も大きかった電子部品・デバイス工業は、モス型半導体集積回路(メモリ)や固定コンデンサ等が主な低下要因となっている。モス型半導体集積回路(メモリ)については、スマートフォンやSSD用途での需要の減少などにより、固定コンデンサについては、海外需要の減少などを受けて、低下したと考えられる。

出荷は3か月連続の上昇

 8月の鉱工業出荷は、季節調整済指数96.6、前月比1.9%と、3か月連続の上昇となった。

 業種別にみると、全体15業種のうち、11業種が上昇、4業種が低下となった。

 8月は、部材供給不足の影響が緩和したことなどを受けて、自動車工業や生産用機械工業等が上昇したことから、全体として上昇した。

 上昇寄与度の最も大きかった自動車工業は、二輪自動車(125ml超)や普通トラック等が主な上昇要因となっている。これらについては、部材供給不足の影響が緩和したことなどを受けて、上昇したものと考えられる。

 次に上昇寄与度の大きかった生産用機械工業は、半導体製造装置やショベル系掘削機械等が主な上昇要因となっている。半導体製造装置については、生産と同様の理由により、ショベル系掘削機械については、船待ちの解消などを受けて、上昇したものと考えられる。

 財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財が前月比1.4%の上昇、資本財(除.輸送機械)が同4.2%の上昇、非耐久消費財が同1.6%の上昇、建設財が同1.8%の上昇、耐久消費財が同0.6%の上昇と、全ての財で上昇となった。

在庫は上昇

 8月の鉱工業在庫は、季節調整済指数101.6、前月比1.4%と、3か月連続の上昇となった。

 業種別にみると、15業種のうち、10業種が上昇、5業種が低下となった。

 上昇寄与度の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車や小型乗用車等が主な上昇要因となっている。これらについては、部材供給不足の影響の緩和や輸出の減少などにより、生産が出荷を上回ったことなどを受けて、上昇したものと考えられる。

在庫率は2か月ぶりの低下

 8月の鉱工業在庫率は、季節調整済指数120.2、前月比マイナス1.8%と、2か月ぶりの低下となった。

 業種別にみると、15業種のうち、6業種が低下、8業種が上昇、1業種が横ばいとなった。

 在庫循環図をみると、2021年第3四半期までは、「在庫積み増し局面」にあったが、第4四半期には、「在庫積み上がり局面」に達しており、2022年第3四半期(速)まで継続している。これまでの部材供給不足などによる生産減少の影響が含まれているが、概ね「在庫積み上がり局面」に差し掛かっているものと考えられる。

8月の生産の基調判断は、「緩やかな持ち直しの動き」に引き上げ

 8月の鉱工業生産は、前月比2.7%の上昇となった。

 生産は、2022年1月に、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症急拡大などの影響を受けて低下したが、2月と3月は、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症拡大の影響が緩和したことなどを受けて、2か月連続で上昇した。

 その後、4月と5月は、中国でのロックダウン等の影響を受けて低下したが、6月に、中国でのロックダウン等の解除などを受けて上昇に転じ、7月は、部材供給不足の影響が緩和したことなどから、上昇した。

 こうした中、8月は、部材供給不足の影響の緩和が継続したことなどから、3か月連続で上昇した。

 また、先行きに関しては、企業の生産計画では、9月と10月はともに上昇となっているが、9月の補正値は前月比1.2%の低下を見込んでおり、ならしてみると緩やかな持ち直しの動きにあると考えている。

 こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の8月の基調判断については、「緩やかな持ち直しの動き」に引き上げる。

 なお、今後は、引き続き、変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や、部材供給不足の影響、物価上昇の影響などについて、注視していく。

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参考図表集
マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」