統計は語る

卸売が好調、小売りは低迷

食料品流通業は回復も停滞感


第3次産業活動指数や鉱工業生産指数等のデータから、飲食料品関連のデータを集めて、飲食関連産業の動向を指標化した「フード・ビジネス・インデックス(FBI)」のうち、食料品流通業指数の2017年第4四半期の結果を紹介する。

3四半期ぶり上昇し、年指数も上昇

2017年第4四半期の食料品流通業指数は指数値99.4、前期比1.1%プラスと3期ぶりの上昇となった。第2、第3四半期の低下分を一気に取り戻し、2017年初の水準に戻した。この水準は、2014年第1四半期の100.5以来の水準であるので、消費税率引上げ後として比較的高い水準となった。(同じ指数レベルであったのが2016年第1四半期)。逆に言えば、このレベルが消費税率引上げ後の食料品流通業の指数の「天井」になっていると言えるかと思う。

2017年通年は指数値99.0、前年比0.5%プラスの上昇となった。直近3年は、上昇(2015年)、横ばい2016年)、上昇(2017年)と推移しており、停滞感は否めないと思う。

なお、第4四半期の業態別のフードビジネス全体の変化に対する各業態の影響度合い(寄与)をみると、FBI計の前期比0.9%上昇に対し、内訳3業態が全て前期比上昇寄与となる中、食料品流通業の影響が最も大きく、0.6%ポイントの上昇寄与を見せた。2017年第4四半期のフードビジネス全体の伸びの3分の2は、食料品流通業によるものだったということになった。

卸売が3四半期ぶりに急上昇

内訳の推移をみると、2017年第4四半期に上昇したのは4系列のうち、「飲食料品卸売業」のみだった。「飲食料品卸売業」は3四半期ぶりの上昇だったが、前期比2.5%プラスと急上昇となった。2010年第4四半期の100.9以来の指数水準だ。

他方で、「飲食料品小売業」と「総合スーパー飲食料品小売」は横ばい、「百貨店飲食料品小売」は3四半期連続の低下となり、上昇傾向で勢いのある卸売系列に対して、小売3系列は横ばいから低落傾向と対照的な動きになった。

飲食料品卸売業と飲食料品の各小売業態の動きは連動しそうなものだが、このような対照的な動きが続いている。この背景には、卸売の取引先である飲食サービス業が比較的堅調であること、食料品の流通ルートの多様化などの要因があるようだ(詳細については、こちらの「ひと言解説」)。

また、小売業態の中でも、コンビニやいわゆる食品スーパーが中心となる飲食料品小売業に対し、総合スーパーやデパートの食料品の販売動向が明らかに劣後している状況が見て取れる。このような動きには、身近な店舗での食料品購入へのシフトがあるのかもしれない(詳細については、こちらの「ひと言解説」)。

低下した百貨店の影響は僅か

食料品流通業全体の前期比1.1%上昇に対する内訳系列の影響度合いを見てみると、何と言っても「飲食料品卸売業」が1.1%ポイントの上昇寄与となっていることに目が行く。

飲食料品小売業、総合スーパーは前期比横ばいであるので、変動寄与はなく、「百貨店飲食料品小売」は低下寄与でしたが、その影響は僅かだった。

2017年第4四半期の食料品流通業の上昇は、卸売業1系列の寄与のみだったことになる。2017年各期の系列ごとの寄与をみても、4つの四半期全てで飲食料品卸売業の寄与が最も大きくなっており、良いときも悪いときも食料品流通業は、卸売業の影響を受けた一年だったと言えるだろう。

食料品流通業の事業規模は117兆円

ちなみに、2017年の商業動態統計の結果を用いて、食料品流通業の名目事業規模(売上規模)計算してみた。

2017年の食料品流通業の名目事業規模は、117兆円ほどだが、この内、71兆円が卸売業で、46兆円が小売業だ。2016年との比較でも、卸売業が2兆円ほど売上規模を伸ばしていたが、小売業はほぼ横ばいだった。フードビジネス全体の伸びも3兆円ほどだったので、その多くが卸売業の事業規模の拡大分ということになる。

元々、事業規模が大きい卸売業の相対的好調が、食料品流通業、ひいてはフードビジネス全体の伸びを支えていたことが、この面でも確認できる。

関連情報
ミニ経済分析「飲食関連産業の動向(FBI 2017年第4四半期)」のページ

食料品流通業は前期比1.1%と3四半期ぶりの上昇で2017年通年も前年比上昇。卸売の上昇寄与によるもので、卸売の事業規模も2016年から2兆円ほど増加している。