統計は語る

5月の鉱工業生産は、自動車工業など多くの業種で低下したことから2か月連続の低下、基調判断は「生産は弱含み」に引き下げ

5月生産は2か月連続の前月比低下

 2022年5月の鉱工業生産は、季節調整済指数88.3、前月比マイナス7.2%と、2か月連続の低下となった。

 これまでの生産の動向については、2021年10月から12月にかけて、部材供給不足等の影響の緩和などを受けて、3か月連続で上昇したが、2022年1月は、再び部材供給不足や新型コロナウイルス感染症急拡大などの影響を受けて、低下した。

 2月と3月は、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症拡大等の影響が緩和したことなどを受けて、2か月連続で上昇していたが、4月は、海外需要の減少や中国でのロックダウン等の影響を受けて、低下に転じた。

 5月は、引き続き中国でのロックダウン等の影響を受けて、大幅に低下した。

13業種が前月比低下、2業種が前月比上昇

 5月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、13業種が前月比低下、2業種が前月比上昇という結果だった。

 5月は、中国でのロックダウン等の影響を受けて、自動車工業や電気・情報通信機械工業、生産用機械工業など、多くの業種が低下したことから、全体として低下した。

 主な低下寄与業種についてみると、低下寄与度の最も大きかった自動車工業は、普通トラック、普通乗用車等が主な低下要因となっている。これらについては、いずれも中国でのロックダウン等の影響を受けて、低下したものと考えられる。

 また、次に低下寄与度の大きかった電気・情報通信機械工業は、リチウムイオン蓄電池、セパレート形エアコン等が主な低下要因となっている。リチウムイオン蓄電池については、引き続き好調な水準にあるものの車載向けの減少などにより、セパレート形エアコンは、中国でのロックダウン等の影響を受けて、低下したものと考えられる。

 さらに、その次に低下寄与度の大きかった生産用機械工業は、繊維機械やショベル系掘削機械等が主な低下要因となっている。これらについては、中国でのロックダウン等の影響を受けて、低下したものと考えられる。

出荷は2か月連続の低下

 5月の鉱工業出荷は、季節調整済指数89.0、前月比マイナス4.3%と、2か月連続の低下となった。

 業種別にみると、全体15業種のうち、12業種が低下、3業種が上昇となった。

 5月は、中国でのロックダウン等の影響を受けて、自動車工業や電気・情報通信機械工業、汎用・業務用機械工業など、多くの業種が低下したことから、全体として低下した。

 低下寄与度の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車、駆動伝導・操縦装置部品等が主な低下要因となっている。これらについては、いずれも生産と同様に、中国でのロックダウン等の影響を受けて、低下したものと考えられる。

 また、次に低下寄与度の大きかった電気・情報通信機械工業は、リチウムイオン蓄電池やセパレート形エアコン等が主な低下要因となっている。リチウムイオン蓄電池、セパレート形エアコンについては、いずれも生産と同様の要因から低下した。

 さらに、その次に低下寄与度の大きかった汎用・業務用機械工業は、軸受、精密測定機等が主な低下要因となっている。軸受については、自動車向けの減少を受けて、精密測定機については、前月に出荷増となった反動から、低下した。

 財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財が前月比5.2%の低下、耐久消費財が同15.0%の低下、資本財(除.輸送機械)が同4.4%の低下、非耐久消費財が同0.9%の低下、建設財が同2.0%の低下となり、全ての財で低下した。

在庫は3か月連続の低下

 5月の鉱工業在庫は、季節調整済指数98.5、前月比マイナス0.1%と、3か月連続の低下となった。

 業種別にみると、15業種のうち、8業種が低下、6業種が上昇、1業種が横ばいとなった。

 低下寄与業種の中では、特に、自動車工業の低下寄与が大きくなっている。自動車工業では、中国でのロックダウン等の影響により、生産が減少したことなどを受けて、在庫が低下したものと思われる。

在庫率は2か月ぶりの上昇

 5月の鉱工業在庫率は、季節調整済指数121.5、前月比4.7%と、2か月ぶりの上昇となった。

 業種別にみると、15業種のうち、10業種が上昇、5業種が低下となった。

 在庫循環図をみると、2020年第4四半期と2021年第1四半期は、「意図せざる在庫減局面」にあり、2021年第2四半期には、「在庫積み増し局面」に達し、第3四半期も継続したが、第4四半期では、「在庫積み上がり局面」に達しており、2022年第2四半期(速)まで継続している。

 しかしながら、部材供給不足などによる生産減少の影響が含まれていることなどから、今後、もうしばらくその動向を注視していくことが必要だ。

5月の生産の基調判断は、「弱含み」に引き下げ

 5月の鉱工業生産は、前月比7.2%の低下となった。

 生産は、2022年1月に、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症急拡大などの影響を受けて低下したが、2月と3月は、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症拡大の影響が緩和したことなどを受けて、2か月連続で上昇していた。

 こうした中、4月は、海外需要の減少や中国でのロックダウン等の影響を受けて、再び低下に転じ、5月は、引き続き中国でのロックダウン等の影響を受けて、大幅に低下した。

 また、先行きに関しては、企業の生産計画では、6月と7月はともに上昇となっており、6月の補正値は前月比4.9%の上昇を見込んでいるものの、5月の減少分を取り戻す動きにはなっていないことから、ならしてみると弱含みの状態にあると考えている。

 こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の5月の基調判断については、「弱含み」に引き下げる。

 なお、今後は、引き続き、変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や、部材供給不足の影響、物価上昇の影響、ウクライナ情勢などについて、注視していく。

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参考図表集
マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」