エネルギーを巡る不確実性へ対応する-エネルギー白書2022
エネルギー資源の多くを輸入に頼る日本では、海外の情勢から大きな影響を受けます。先般公開したエネルギー白書2022では、福島復興の進捗や2050年カーボンニュートラル実現に向けた対応に加え、ロシアのウクライナ侵略などにより不確実性が高まるエネルギー問題について様々な視点から分析し、政府の対応を示しています。今年の白書から、ポイントを紹介します。
世界的なエネルギー需給の逼迫と価格高騰の加速
ロシアによるウクライナ侵略以前にも、世界のエネルギーを巡る需給状況は厳しさを増し、価格が高騰していました。その要因は、2015年以降、原油価格の下落で化石燃料への投資が停滞し、脱炭素の流れも重なって供給力不足が深刻になったことです。また、新型コロナウイルス感染症により停滞した経済が回復するにつれて、各国でエネルギーの需要が増えました。その一方で、天候不順などにより再生可能エネルギーが期待通り動かなかったことも影響しています。
ロシアのウクライナ侵略はこうした厳しい状況に追い打ちをかけました。特に欧州では、天然ガスや石油など化石燃料をロシアに頼っている国が多く、大きな影響が出ています。
原油・天然ガス・石炭などの化石燃料の輸入価格は、イギリス、オランダ、ドイツで2倍を超えるなど急上昇しており、生活にも影響を与えています。日本では、国民生活や企業活動への影響を最小限に抑える対策(燃料油価格激変緩和事業)を実施しているため、消費者価格は各国に比べ相対的に上昇幅が低い状況です。
実行段階に入るカーボンニュートラル
温室効果ガスの排出実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル」は、世界でいかに目標を達成するかという実行段階に入り、ルール作りも進んでいます。例えば、イギリスやアメリカ、日本では、金融面で上場企業に気候変動対策の情報を開示するよう求める動きが進展。政策面では、脱炭素社会のエネルギー構造、たとえば電化の促進と電力の脱炭素化、水素化、CCUSなどに、各国が具体的な支援をはじめています。
なお、国によりエネルギー事情が異なるため、カーボンニュートラル実現に向けた進め方も国ごとに異なります。日本や中国では「産業」に対するCO2削減対策を講じているのに対し、欧州では「民生」(一般家庭での使用)、米国では「運輸」に対する政策を実施しています。
廃炉と事業・なりわいの再建を着実に進める
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から11年がたちました。これまでに3・4号機から使用済み燃料プール内の燃料の取り出しを完了し、燃料デブリ(溶けた燃料が冷えて固まったもの)の取り出しについてロボットアームの本格的な試験を開始するなど、廃炉作業が着実に進んでいます。
事業・なりわいの再建では、事業再開や経営改善、販路開拓などの支援を通じて、約2,700の事業者が事業再開を実現しました。新産業の創出(福島イノベーション・コースト構想)とともに、交流人口の拡大と移住・定住の促進に取り組んでいます。
日本のエネルギー政策の「いま」を知る
安定した資源の確保、再エネの主力電源化、激甚化する自然災害も踏まえた国内エネルギー供給網の強靭化、新しいエネルギー構造への変革。エネルギー白書で日本のエネルギー政策の「いま」を知り、未来に向けて考えてみませんか。
経済産業省 資源エネルギー庁 長官官房総務課 調査広報室