地域で輝く企業

デジタル・AIの技術を駆使し、三方よしの精神で地域企業の課題解決に貢献する

ミヤックス 仙台市泉区

仙台市泉区のミヤックス本社オフィス

遊具、オフィスの既存2事業に加え、「デジタル、AI事業」を新規スタート

 1948(昭和23)年の創業で、元々は初代の高橋正太郎氏が学校への理科実験器具などの教材販売から始め、次に遊具の製造・販売・保守管理、さらに快適な働く環境を学校や企業などに提供する教育施設・オフィス事業を手がけるようになった。

 2代目の高橋文蔵・代表取締役会長CEOに続いて現場で経営の手腕をふるうことになったのが、3代目の高橋蔵人・代表取締役社長COOで、2020(令和2)年に現職に就いてからは、既存の事業に加え、デジタル事業、DX地域課題解決事業の拡大に積極的に努めている。

 「もうモノを売る時代ではなくて、企業として利益をあげることを考えると、付加価値を付けづらい業界は生き残りが大変だと思うのです。従来、私たちが扱ってきた机とか椅子、家具だと定価があって、なかなか利益をあげづらい。お客様の価値観、ニーズも多様化しています。付加価値に重きをおいた事業の展開が必要と考え、デジタル、AI事業を始めることにしました。

 2019(令和元)年に立ち上げたAI・イノベーション事業部を2年後に『MIYAX DIGITAL』と改称し、自社もデジタルを活用した企業変革を目指しつつ、地域企業の課題解決や価値創造を支援しています」

2020年に現職に就いた高橋社長は、ベンチャー企業の創業者兼COOと大学教員の三つの顔を併せ持つ。

地元企業の課題を産官学連携で解決する支援事業が「東北経産局DX大賞」で優秀賞

 こう話す高橋社長は1983(昭和58)年、地元仙台市生まれで、仙台第三高校を卒業後、米ワシントン州立大学でファイナンスを専攻。卒業・帰国後、東京のコンサルティング会社で3年間勤め、2010(平成22)年にミヤックスに入社した。

 同社の社長であると同時に、今年4月までAIベンチャー企業「aiforce solutions」(東京都千代田区)の共同創業者兼取締役COOを務め、かつ東北大学ではデータ駆動科学・AI教育研究センター特任准教授(客員)として、文系学生を対象にAI、データサイエンスを教えている。後者二つの「肩書き」がMIYAX DIGITALを推進していく際の確固たる軸となっている。

「伊達CRAFT」のバーチャル店舗

 新規事業としてまだ日が浅いものの、MIYAX DIGITALでは、たとえば老舗百貨店の「藤崎―FUJISAKI」の店舗内にある伝統工芸品を扱うセレクトショップ「伊達CRAFT」のバーチャル店舗・プロモーションビデオの制作、仙台市の外国人留学生定着支援事業におけるマッチングイベントや講義の提供、県内企業を紹介する動画制作など、いくつも実績を残している。

 そのうちの一つである、地元企業が抱える企業課題をデジタル、AI技術を駆使して産官学連携で解決するDX支援事業は、昨年、東北経済産業局主催で開催された「TOHOKU DX大賞」において、優秀賞に選ばれている。

東北経済産業局主催で開催されたTOHOKU DX大賞でプレゼンする高橋社長

学生が企業の課題解決をデータ活用でサポート、フードロス50%以上削減の見通しを提案

 「都市部と違い地方では、中小の企業が何か問題解決に取り組もうとしても、相談できる相手が容易に見つかりません。一方で、高等教育機関でデータサイエンス教育の重要性が叫ばれているものの、教える教員が不足しているのと、そもそも大学そのものがデータを持っていないので、実践的な教育ができていないのが現状です。

 両者の課題を解決するために、企業からのデータ提供と、学生によるデータ解析と課題解決策の立案を弊社で仲介しています。データ活用のためのAI・機械学習、BIのツールとしては、文系学生でもマウス操作程度で扱うことができるソフトウェアがあり、それらの使い方を弊社で学生にアドバイスしています。一部、aiforce solutionsで開発したソフトウェアを使っています」(高橋社長)

 具体的な例としては、年間で1000万円以上のフードロスが発生していた宮城県内の小売業者への解決策の提案が挙げられる。学生がAI、BIを駆使して、入社3年目の社員と同レベルの1週間後販売予測AIモデルを構築した結果、アルバイトでも精度の高い予測が可能となり、50%以上のロス削減効果が見込まれるとの結果が出た。

学生によるフードロス50%以上の見通しを実現可能にしたAI、BIによる予測モデル。

「やりがいのある仕事」遊具事業を軸に事業を展開していく

 現在、ミヤックスが掲げる主要3事業である遊具事業、教育施設・オフィス事業、MIYAX DIGITALのうち、MIYAX DIGITALが占める売り上げ比率は約1割。さらにここを伸ばしていくのかと思いきや、高橋社長の胸の内は違っていた。

 「デジタル事業にどれだけ注力していくかは、時代ごとに違ってくると思います。いまデジタルに力を入れているのは、マーケティング、ブランディングが目的で、既存の二つの事業の土台として、デジタルで評価を高めておかないと企業としての強みが持てないと考えているからです。弊社の最大の強みは、遊具メーカーとして長く培ってきた信頼とノウハウの蓄積です。大手が競合するオフィス事業ではむずかしいかもしれませんが、遊具だと全国で10本の指に入れる企業になれます。私自身、遊具の仕事を始めてすぐに、『置いてすぐにみんなに笑顔になってもらえる、こんなやりがいのある仕事はない』と思いました。そこを軸にして事業を展開していきたいと思っています」

 その際に、最大の武器となるのが、やはりMIYAX DIGITALが担うコンサル力だ。たとえば、遊具にセンサーを設置し、利用者のビッグデータを収集する。かねて病気になりやすい、がんになるリスクなどを調べるためにデータを収集しているが、それは病気になってからのもので、データとして連続性・蓄積性がない。遊具は、子どもを始め、不特定多数の人が利用する。幼少期からの収集が可能で、有効なデータとなりうる。また、短期的には、遊具の点検の時期、有無の判断材料となるデータの自治体への提供なども視野に入れている。

お茶の井ヶ田が運営する観光農業施設「秋保ヴィレッジ」内の「わんぱーく」は今年4月29日、ミヤックスにより、すべての子どもが同じように楽しく遊べるインクルーシブな公園としてリニューアルオープンした。

創業100周年に向け、先入観を捨て、強みを生かす

 高橋社長は、祖父、父に続く3代目の事業承継で、2019(令和元)年のAI・イノベーション事業部(現MIYAX DIGITAL)の立ち上げは、「後継として認めてもらえるよう、それにふわさしい実績を作りたいという思いがあり、先の2人が考えつかない、自分ならではの取り組みとして始めました」と話す。その上で、これから先の舵取りについて、次のように話してくれた。

 「4年前の創業70年の時に、100周年に向けてのメッセージとして、『先入観を捨て、強みを生かす』というメッセージを発しました。引き続き、それを意識しながら、経営に取り組んでいきたいですね。むやみに新しいことに取り組むのではなく、脈々と培ってきたミヤックスの精神性を土壌に、デジタル、AIの技術を組み合わせ、イノベーションを起こすことで、企業としての成長が可能になると考えています。創業以来、『三方よし』の精神で、いい仕事をすることを心がけて事業を展開してきました。社会に必要とされてこそ、企業として存在する意味がある。これからも、社会に役立つ企業であり続けたいと思っています」

【企業情報】
▽所在地=宮城県仙台市泉区寺岡1-1-3 ▽代表取締役社長 COO 高橋蔵人氏 ▽売上高=非公表 ▽創業=1948(昭和23)年