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進む健康経営の見える化 2000社の‘偏差値’開示

 従業員の健康を資本として捉え、企業戦略として投資する「健康経営」。経済産業省では今年3月、2000社分の健康経営の‘偏差値’が項目別に分かる成績表を一括公表しました。

広がる「健康経営」の取り組み

 「健康経営」とは、企業が経営的な視点で従業員の健康に投資することにより、健康状態の改善、やる気や職場の魅力向上、更には企業の価値を高めることを目指すものです。具体的な取り組みの例としては、健康づくりセミナーの実施、適切な運動や食事の支援といった生活習慣病対策をはじめ、メンタルヘルス対策や感染症対策など、多岐にわたります。

企業を取り巻くステークホルダーが注目

 健康経営の実践にあたっては、経営層のコミットメント、組織体制の整備、自社の課題に応じた施策の実行に取り組み、それらを継続的に改善することがポイントです。近年では、人を大切にする企業として、従業員や求職者、更には取引先企業からの評価が高まっているほか、将来的な成長が見込まれる企業として、機関投資家からも注目されています。例えば、野村アセットマネジメントやアクサ生命保険など、「投資先の健康経営の取組状況をESG投資におけるS(社会)分野の評価材料にする」と宣言する会社も出てきています。

健康経営に取り組む企業が評価される社会に

 経済産業省では、これまで優良な健康経営に取り組む法人を「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」として‘見える化’することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業」として社会的に評価を受けることができる環境の整備を進めてきました。今般の各企業の‘偏差値’の開示はさらなる‘見える化’に踏み込んだものです。
 令和3年度健康経営度調査※では、過去最多となる2,869法人(上場企業1,058社を含む)から回答がありました。経済産業省では、そのうち「開示可能」と回答した2000社(日経平均株価を構成する225社のうち70%の158社を含む)の評価結果を公表。この中では、各社の健康経営に関する戦略が開示され、健康課題への対応などについて、個社ごとの評価(偏差値)を各企業、業種平均に分けて示しており、人的資本について法令に依らない任意の開示の仕組みとしては、質と量の両面において充実したものになっていると評価されています。
  ※従業員の健康に関する取り組みについての調査。「健康経営銘柄」の選定および「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定のための基礎情報を得る。

評価結果の総論部分のサンプル

 数字を出すことは、企業にとって勇気がいることですが、将来のビジョンとも関連付けながら改善の状況を示すなど、積極的な情報開示に取り組む姿勢自体が外部からの評価につながるという側面もあります。

 今般の新型コロナウイルス感染症を契機に、各個人だけでなく企業経営においても、健康に投資することの価値が更に高まっています。経済産業省では、評価結果をはじめとした健康経営に係る情報の開示が、他社との比較を通じた更なるレベルアップや、様々なステークホルダーからの評価を通じた企業価値向上につながることを期待しています。さらに、英語でも公表し、国内にとどまらず、海外の投資家や人材が日本企業の健康経営に注目し、国際的に評価される社会の実現を目指します。

経済産業省 ヘルスケア産業課
【関連情報】
令和3年度健康経営度調査に基づく2,000社分の評価結果を公開しました (METI/経済産業省)
Evaluation Sheets Published for 2,000 Enterprises Under the FY2021 Survey on Health and Productivity Management
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