政策特集サーキュラー・エコノミー移行への第一歩 vol.3

「海洋プラごみ問題」解決へ広がる連携の輪

CLOMAの取り組みと展望

プラごみ問題は地球規模の課題となっている(写真はイメージ)

 海岸への漂着ごみ、川や海に沈むプラごみが分解されずにマイクロプラスチックとして残り続け、環境汚染を引き起こす「海洋プラスチックごみ」。海洋環境や生態系に多大な影響を与えることから、地球規模の対策が急務とされている。日本でも海洋プラごみ問題の解決につながる廃プラ対策やプラ資源循環の取り組みを世界に先駆けて実践するため、オールジャパンで連携の輪が広がっている。

異業種・同業他社も連携に参加

 プラスチックは利便性の高さから多様な工業製品に使用されてきた。一方で、使用済みプラの一部が適切に回収・廃棄されないことで、環境中に放出されている。2015年には少なくとも世界で年間約800万トンのプラスチックが陸域から海域に流出していると報告された。また、2050年には海洋中のプラスチック量が魚の量以上に増加するとの試算もあり、今後の持続可能性に対する懸念が示されている。

 ※「CLOMA VISION」より

 こうした問題の解決に官民・民間同士が連携して取り組むため、2019年に設立されたのが「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」だ。日本の産業界が技術やノウハウを持ち寄ることでイノベーションの創出につなげ、資源循環システムの整備や代替素材開発などで協業を目指す。

 参加企業・団体は2022年2月末時点で462社・団体に上る。会員企業には素材開発を行う原料メーカーや、容器開発を行う容器メーカー、容器包装などを利用する食品・日用品メーカー、製品設計を行うブランドオーナー、卸売・小売業、リサイクラー、業界団体など多彩な顔ぶれが並ぶ。川上から川下、動脈から静脈までサプライチェーン全体をフォローでき、それぞれに関わる事業者が連携している。これまで、技術情報の共有や、企業の取り組み発信、新しい技術に関心を持つプラ利用事業者とメーカーのマッチングなどを行った。

 2020年5月には「2030年時点で容器包装リサイクル60%」「2050年にプラスチック製品リサイクル100%」を全体目標に掲げる『CLOMAアクションプラン』を公表。

 目標達成に向けた分野別の活動(キーアクション)として、①プラスチック使用量の削減 ②マテリアルリサイクル率の向上 ③ケミカルリサイクル技術の開発・社会実装 ④生分解性プラスチックの開発・利用 ⑤紙・セルロース素材の開発・利用 を方針づけている。

 最近では、競合関係を超えて企業同士が協働し、具体的な取り組みに発展した事例もある。

 例えば、日用品メーカーの花王とライオンが協働し、小売店の協力を得て使用済み詰め替えパックを分別回収する実証実験を始めた。

使用済みパックが再生されるまでの流れ


 回収した詰め替えパックは、リサイクラーや花王の工場に設置したパイロットプラントでリサイクルし、両社共同でリサイクル技術の開発・検証を行う。実証実験を通じて、効果的な回収プロセスやリサイクルしやすい包装容器の設計などを検討し、水平リサイクルの実現を目指している。

資源循環促進に向けグランドデザイン検討へ

 海洋プラごみ・廃プラの問題に対し、CLOMAはどう解決策を示していくのか。澤田道隆会長(花王会長)に展望を聞いた。

CLOMA 澤田道隆 会長


 -CLOMA設立から3年が経ちました。これまでの活動の手応えはいかがですか。

 「意義のある3年間でした。会員企業は増加の一途をたどり、動脈産業(資源を加工して製品を製造し販売する産業)・静脈産業(製品を回収し再使用・再生利用・適正処分を行う産業)のさまざまな企業が互いに連携・情報交換できる組織になりました。オブザーバーとして自治体の参加も増えており、分別回収など民間の取り組みでは補完しきれないことに関しても意見交換できる貴重な場になっています。設立後は事業者マッチング・技術開発支援・国際連携推進を行う3部会の活動と、アクションプラン推進活動を進めてきました。ただ、今後はもう一段階レベルアップした活動を展開したいと思います」

 -レベルアップとおっしゃいましたが、具体的にどんな活動を展開しますか。

 「これまでは会員間の連携や実証実験など多面的な取り組みを促進してきました。こうした取り組みは重要ですが、個々で得られる成果に限界があり、いずれは社会全体の仕組みとして発展させる必要があります。プラについて考えると、製品の企画段階から循環利用を前提とした材料の選定や設計がなされ、『生産・提供』『回収・リサイクル』まで含めたサプライチェーン全体での対応が求められます」

サプライチェーンと連携のイメージ(CLOMAアクションプラン詳細資料より)


 「CLOMAでは新たな循環システムの形成に向けた検討チームを立ち上げる予定です。立ち上げから3年をめどに、日本の技術や強みを活かした、世界に先駆けたプラ資源循環のグランドデザイン(構想)を提案したいと考えています」

 -4月からプラスチック資源循環促進法(プラ法)が施行されます。どのように受け止めていますか。

 「プラの過剰使用や資源循環に対し、消費者が意識を向ける良い機会になると期待しています。プラ法を契機とした各種制度の設計や、企業、自治体の新たな取り組みに協力したいと考えています。また、企業や自治体の先進的な取り組みに対し、適切なインセンティブを与えて欲しいと思います。とはいえ、資源循環を高度化するには多様な立場の事情を考慮する必要がありますし、コスト負担の問題も生じます。そのため、施行後は新しい課題も出てくるでしょう。CLOMAには多様な企業・自治体が参画しています。連携の強みを活かし、課題の洗い出しや、法制度に先駆けた取り組みを率先したいと思います」
 
 
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