冷凍食品の人気が拡大中?統計で動向をつかむ
ここ最近「冷凍食品が人気」とのニュースを目にすることが多くないだろうか。今回は統計結果から「冷凍食品※1 」の動向を見ていく。
※1 この資料における「冷凍食品」とは、野菜、水産物及び食肉を原料として味付けなどおこなった調理食品を冷凍し、凍結状態のまま包装した冷凍調理食品(例:魚類フライ、スティック、コロッケ、しゅうまい、ぎょうざ、ハンバーグ(冷凍)、米飯(冷凍)等)を範囲としている。味付けなどの調理をしていない冷凍水産物(冷凍魚)などは含まない。
国内での生産状況は増加傾向
まずは、国内での冷凍食品の生産状況について、工業統計調査の品目別統計表における「冷凍調理食品※2」に着目し、確認していく。
直近(最新)の調査結果である2020年工業統計調査※3では「冷凍調理食品」の製造品出荷額は1兆1,999億円だ。過去5年間の製造品出荷額(名目値)の推移をみると、増加傾向になっていることがわかる。
※2 「冷凍調理食品」には“一般家庭用”のほか、レストラン、スーパーやコンビニエンス・ストアに並ぶお弁当及びお惣菜などに使用する“業務用”も含む。
※3 全国の製造業を営む事業所(従業者4人以上)を対象として、2020年6月1日(調査日)に実施した。なお、製造品出荷額などの経理項目は2019年(暦年)を把握し、この資料では“2019年”と表記する。)
他にも、工業統計調査から読み取れることを一部紹介する。
この調査は“構造統計(調査)”に区分される。調査対象数の多さから調査の実施周期は“年”となっており、次の段落以降で参照する第3次産業活動指数や家計調査などのように、足下までの“毎月”の数値をみることはできない。一方で都道府県別(地域別)や資本金階級別など、より詳細な切り口から“産業構造”を把握できる利点がある。
2019年で都道府県別に「冷凍調理食品」の製造品出荷額(以下、「出荷金額」と言う。)が多い順に構成比を見ると、上位5道府県で全体の1/3を占めていることがわかる。これらの道府県には、誰もが想像できる冷凍食品メーカーの工場が所在している。
また、同様に経営組織(会社組織の場合は資本金階級)別の出荷金額では、会社のうち資本金5千万円以上の2つの階級で全体の7割を占めていることがわかる。「冷凍調理食品」の出荷金額は、比較的規模の大きな企業に集約されている構造となっていることも読み取れる。
外食産業が不振のなか順調な飲食料品小売業
次に、第3次産業活動指数で、冷凍食品との関連性(冷凍食品を取り扱っている場合)が高そうな飲食料品小売業と飲食店,飲食サービス業について、指数の動きを足下まで追ってみる。
2019年までは同程度の水準であったものの、コロナ禍の2020年をさかいに、飲食料品小売業指数は微増傾向で推移している。対して、飲食店,飲食サービス業指数は大きく低下をしていることが読み取れる。
度重なる緊急事態宣言の影響により、厳しい状況の続く飲食店,飲食サービス業を横目に、飲食料品小売業は順調な動きだ。冷凍食品が微増の一翼を担っているのかもしれない。
冷凍食品は個人消費においても増加
今度は、家計消費のうち冷凍食品と一般外食についてみていく。
2019年までは同様の動きをしていたものの、2020年をさかいに一般外食の支出は大きく減少している。一方、冷凍食品の支出は増加傾向をたどっている。
このことから、冷凍食品がコロナ禍を期により一層好調の動きであることが読みとれる。
お手軽・便利だけではない“美味しい”もポイント、今後も注目の冷凍食品
ここまで、冷凍食品について統計結果から読み解いてきた。製造に大規模な設備が必要な大企業型産業の典型であり、コロナ禍でも不況知らずのため、小規模企業が多い飲食サービス業とは大局的な内容となった。
コロナ禍での巣ごもり需要(まとめ買い)や在宅勤務時の昼食にお手軽で便利なことが、冷凍食品が好調な要因のひとつだが、それだけではない。 民間アンケートの結果では「コロナ禍で初めて冷凍食品を利用した人がそのおいしさに驚いた」との回答が少なくなかった。冷凍食品のリピーターが増加している情報もある。 また、「冷凍食品専門スーパー」や「通信販売(EC)サイト」、「レストランが手がける冷凍食品(持ち帰り販売)」などの市場も活況なようだ。スーパーやコンビニエンス・ストアにおいても、冷凍食品売り場を拡大する動き(方針を示している場合も含む)があるなど成長が楽しみな産業だ。
一方、原材料価格の高騰から、本年(2022年)2月以降の値上げがどの程度影響するかなどの不安材料もある。 いずれにしても、今後、どのような動きをするのか注目したいところだ。