政策特集君は、万博をどう味わうか~心を動かし、社会を変える vol.4

デザインが新たな時代の「万博」にもたらすもの

中川翔子さん、井口皓太さんインタビュー

 これまでの万博では、多様なロゴマークやキャラクターが登場した。それぞれが万博のシンボルとなり、今もなお私たちの心の中で存在感を発揮する。デザインがこの時代に万博にもたらす力は何か。デザインやコンテンツが単なるアイコンではなく、様々な活動の象徴やムーブメントであるためにはどうするべきか。

 新たな時代の万博を象徴するキャラクター、コンテンツ・デザインの活用法を、ともに大阪・関西万博キャラクターデザインの選考委員も務めるタレントの中川翔子さん、クリエイティブディレクターの井口皓太さんに聞いた。

言葉・世代・国籍を超えて支持されるキャラクター

 —中川さんは、2025年の大阪・関西万博の誘致に尽力され、キャラクターデザインの選考委員も務められています。特に誘致の面では、ポケモンのスペシャルサポーターとしての存在感は大きいですね。

 「はい。ピカチュウは黄色くてほっぺが赤くて、誰からも愛されるキャラクターです。日本はキャラクター大国として、世界中で有名です。独特な線で生み出された沢山のキャラクターたちが、言葉も、世代も、国籍も超えて支持されているのは素晴らしいことだと思います」

 「2025年の万博誘致の時からポケモンと一緒に活動しています。万博限定のピカチュウのぬいぐるみを抱くと子供たちが満面の笑顔になれるし、偉い方々もとろけるような顔になってしまう。2025年の万博が大阪・関西に決まった功労者の一人は、ピカチュウかもしれません(笑)」

 —「独特な線」というのは、どういうことですか。

 「アニメの作画の現場を拝見したことがあります。そこではPCで着色していますが、線画は全て人の手で行います。監督のOKが出るまで何度も描き直して、次の工程の人が影を付けてと、一つの絵柄をスタッフ皆さんで作り上げます。キャラクターに人の温もりが宿っているからこそ、老若男女を問わず熱狂してしまうのでしょう」

長く愛されるキャラクターに出会いたい

「キャラクターが生まれる背景には、生みの親の人生やその人の“好き”がいっぱい詰まっている」と中川翔子さん。

 —キャラクターやマスコットが発揮する力は、とてつもなく大きいですね。

 「愛知万博のマスコットキャラクター「モリゾー」と「キッコロ」は、万博の枠を超えた有名な存在になりました。アニメになったり、アイススケートショーにも登場したりするなど、現在も愛される存在です。2025年の万博のマスコットもずっと継続して愛されるものであるといいですよね」

 —大阪・関西万博では、どんなキャラクターデザインが選ばれると思いますか?

 「着ぐるみになってダンスした時など、動きが入ったポーズが想像しやすいのがいいのですが、何もせずにただ立っているだけで可愛いのもいい。どちらも捨てがたいです。モリゾーとキッコロのように2体あっても素敵。何が良いかは、とても難しいです…」

 「一つ言えるのは、子供たちが描きたくなるものであるといいのかもしれません。2020年東京オリンピック・パラリンピックのマスコットキャラクターの選考にも携わりましたが、その時は最終的に全国の小学生の投票で決まりました。大阪・関西万博では、万博の枠を超えて未来永劫愛されるキャラクターが決定することを期待しています。キャラクターが生まれる背景には、生みの親の人生や、その人の“好き”がいっぱい詰まっています」

 —“好き”は、いろんな文化の源になりますね。

「“好き”が高じたオタク文化は、以前、虐げられていましたが、今や「一億総ライトオタク時代」です。いろんな“好き”があっていい。選考を通じて多様な人々の“好き”に出会えることを、楽しみにしています」

 中川翔子(なかがわ・しょうこ)
歌手・タレント・女優・声優・イラストレーター。インターネットやオタク文化、日本の漫画、特撮などに造詣が深い。2020年東京オリンピック・パラリンピック・マスコットキャラクター選考委員、2025年大阪・関西万博誘致アンバサダー、同万博マスコットキャラクター選考委員を務める。

誰かと繋がってモノづくりをする大切さ

「これからはユーザーに直接届くようなコミュケーションが必要になる」と井口皓太さん。

 —ドバイ万博日本館では、6つのシーンで構成される展示のうち「シーン5:アイディアの出会い」のクリエイティブレクターを務められました。特に、16人の若手クリエイター達で作り上げたアバターや、360度の全周型シアターにデータ技術とグラフィックアートを取り入れた「LAND」はとても印象的です。多くのクリエイターで作り上げる意義は。

 「私は37歳ですが我々以上の世代にとって、万博やオリンピックに関わるのはある種の“夢”でした。しかし、そういう国際的な国家プロジェクトに興味を持たない若い世代が増えていることを懸念していました。若い世代からすると「上の世代がポジション争いをやっている中央集権型の万博なんて、俺たちは関係ない」というイメージでしょうか。そのように感じている世代をドバイ万博に巻き込み、次の大阪・関西万博にも関わってもらう。「中央集権型」の万博ではなく、もっと裾野を広くした「分散型」の万博になるのが重要だと考えていました」

 —万博の創造の仕方も、時代によって変わっていくのでしょうか。

 「そうですね。自分の名前でモノづくりをする責任はもちろん大事ですが、若いクリエイターは、誰かと繋がってモノづくりをするのに抵抗がない。この共創の姿勢こそが、これからのデザインに必要だと思います」

全周型のシアターにグラフィックアートを取り入れた(シーン5) 2020年ドバイ国際博覧会日本館 提供

デザインの力で、未来のビジョンを描く

 —デザインの力やデザイナーのスタンスも変わっていくということでしょうか。

 「従来のデザインは、B to Bで作られている部分が多いのですが、これからはD to C (Direct to Consumer)、つまりユーザーに直接届くようなコミュケーションをすべきだと思います。例えば、今アートが流行っているのは、作品を欲しいという人とアーティストが直接繋がっているからです。デザイナーもそうあるべきで、デザインを欲しい人と直接繋がることが、これからのかたちです。万博でいえば、我々クリエイターだけでなく、クライアントも企業も広告代理店も巻き込み、クリエイターが先陣を切ってコンテンツ・デザインを来場者に届ける。そして未来のビジョンを描いていけるような存在でありたいと思います」

 「デザインというのは、言葉で表せないものを翻訳して、コミュニケーションの幅を広げていくものです。そして、なぜだかわからないけれど心を揺さぶられる、普遍的に美しいものを創っていける。それがデザインの“力”です。ドバイ万博のクリエイティブを通して、その力をより実感しました」

 —大阪・関西万博のマスコットキャラクターの選考委員も務めていますが、どんなキャラクターを期待していますか。

 「私自身は、キャラクターは一つでなくてもいいと思っています。私に期待されている役割は動かすとか、それを変えていくといった部分なので、もし一つに決まったとしても自由自在に変容できるようなものもいいですね。ドバイ万博日本館のテーマ「アイディアの出会い」の様にしなやかな柔軟性を持ち、変容しうるものを期待しています」

 井口皓太(いぐち・こうた)
映像ディレクター/クリエイティブディレクター。CEKAI代表。「東京2020動くスポーツピクトグラム」の制作を担当。開会式典ではVideo Directorとして参画し、同大会のドローン演出3Dアニメーションも制作している。主な受賞歴に東京TDC賞、D&A yellow pencil、NY ADC賞goldなどがある。ドバイ万博日本館展示シーン5にて、クリエイティブレクターを務める。