統計は語る

10月鉱工業生産:4か月ぶりの前月比上昇も、基調判断は据え置き

 2021年10月の鉱工業生産は、季節調整済指数90.5、前月比1.1%と、4か月ぶりに上昇した。

 これまでの生産については、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、2020年2月から5月にかけて急速に低下した後、6月以降は一転し、回復基調が続いた。半導体不足などの影響から、2021年5月に大幅に低下したものの、6月は再び上昇に転じたが、7月以降は再び低下した。2021年9月までは半導体不足に加え、アジアでの感染症拡大に伴う部材供給不足などの影響により、3か月連続で低下した。

 しかしながら、10月は、部材供給不足の影響などが緩和されたことから、4か月ぶりの上昇となった。

 その結果、2021年10月の生産水準は、2021年8月(指数値94.6)以来の水準となった。

図表01

 8業種が前月比上昇、6業種が前月比低下、1業種が前月比横ばい

 10月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、8業種が前月比上昇、6業種が前月比低下、1業種が前月比横ばいという結果だった。

 10月は、自動車工業を中心に、生産用機械工業や汎用・業務用機械工業などが上昇したため、全体としても上昇した。

図表02
図表03

 主な上昇寄与業種についてみると、まず、上昇寄与の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車や小型乗用車などが主な上昇要因となった。アジア各国での経済活動制限などによる部材供給不足の影響が緩和されたことなどから、4か月ぶりに上昇したものと考えられる。

 また、上昇寄与2位の生産用機械工業については、3か月ぶりの上昇。半導体製造装置や金型などが上昇要因となった。半導体製造装置は海外の設備投資需要などを受けて、金型は自動車向け需要などを受けて、それぞれ上昇したと考えられる。

出荷は4か月ぶりの上昇

 10月の鉱工業出荷は、季節調整済指数88.3、前月比2.0%と、4か月ぶりの上昇となった。

図表04

 業種別にみると、全体15業種のうち、10業種が上昇、5業種が低下となった。

 10月は、自動車工業を中心に、電気・情報通信機械工業や生産用機械工業などが上昇したことから、全体として上昇した。

 主な上昇寄与業種についてみると、まず、上昇寄与の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車や小型乗用車などが主な上昇要因となった。生産と同様に、アジア各国での経済活動制限などによる部材供給不足の影響が緩和されたことなどを受け、4か月ぶりに上昇したものと考えられる。

 また、上昇寄与2位の電気・情報通信機械工業は、4か月ぶりの上昇となった。リチウムイオン蓄電池や一般用タービン発電機などが上昇要因となった。リチウムイオン蓄電池は、海外向けの増加などにより、上昇したものと考えられる。また、一般用タービン発電機については、新規での取引需要などを受け、上昇したものと考えられる。

 財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、資本財(除.輸送機械)が前月比0.8%の低下、建設財が同2.0%の低下であった一方、生産財が同3.3%の上昇、耐久消費財が同27.3%の上昇、非耐久消費財が同2.5%の上昇となった。特に、耐久消費財は、普通乗用車や小型乗用車などの大幅な上昇を受けて、急速に上昇した。

図表05
図表06
図表07

在庫は2月連続の上昇

 10月の鉱工業在庫は、季節調整済指数98.9、前月比0.8%と、2か月連続の上昇となった。

 業種別にみると、15業種のうち、11業種が上昇、4業種が低下した。

 上昇寄与業種の中では、特に無機・有機化学工業の上昇寄与が大きくなっている。無機・有機化学工業では、物流の事情で出荷が減少したことや、定期修理に向けた在庫積み増しなどにより、在庫が増加したと思われる。

図表08
図表09

在庫率は横ばい

 10月の鉱工業在庫率は、季節調整済指数119.9、前月比0.0%となった。

業種別にみると、15業種のうち、7業種が上昇、8業種が低下した。

図表10

 在庫循環図をみると、2020年第4四半期と2021年第1四半期は、「意図せざる在庫減局面」にあり、2021年第2四半期には、「在庫積み増し局面」に達した。これは第3四半期も継続したが、第4四半期(速)では、「在庫調整局面」に達している。

 しかしながら、過去の水準からすると在庫水準自体が未だ高い水準にはないことに加えて、部材調達不足による生産減少の影響が大きいと考えられる。今後、もうしばらくその動向を注視していくことが必要だ。

図表11

10月の生産の基調判断は、「足踏みをしている」で据え置き

 10月の鉱工業生産は、前月比1.1%の上昇となった。生産は、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年2月から5月まで低下が続いた後、6月以降は一転、回復傾向が続いていた。半導体不足などの影響から、2021年5月に大幅に低下したものの、6月は再び上昇に転じた。そして、2021年7月以降は再び低下し、アジア各国での経済活動制限などによる部材供給不足の影響などから、9月まで3か月連続で低下した。しかしながら、10月の生産は、部材供給不足の影響が緩和されたことなどから、上昇に転じた。もっとも、これまでの低下分を回復するまでの上昇とはなっていない。

 一方、先行きに関しては、企業の生産計画では、11月と12月はともに上昇となっており、11月の補正値では前月比4.2%の上昇と予測しているが、ならしてみると引き続き足踏み状態にあると考える。

 こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の10月の基調判断については、「足踏みをしている」に据え置く。

 なお、今後も変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や、部材調達不足の影響などについて、引き続き注視していく必要がある。

 

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