10年で運送手段はどう変わった?
2008年と2017年を比較する
宅配事業における人手不足、豪華列車の旅、さらには、情報技術を活用したシェアドライブ、ドローンや自動運転などなど、運輸業にまつわる話題には事欠かない。実は、運輸業に付帯するサービスまで含めると、運輸業の全サービス産業に占める構成比は、約1割(9%)を占めている。
この重要な運輸業を支える運送運搬手段には、トラック・バス等/船舶/航空機/鉄道など様々なものがある。こういった運送運搬手段の重みや推移を、サービス産業(第3次産業)活動指数の中の運送運搬手段ごとの指数を用いて確認していきたい。
60%以上が道路運送
現在公表しているサービス産業活動指数の最も古いものは、平成20年(2008年)、まさにリーマンショックの生じた年のデータだ。この年の運送運搬手段ごとの構成比を円グラフにしたものが下の円グラフである。
この「構成比」は、各運送手段の運送事業によって生じた付加価値の構成比だ。運んだ貨物量や人数ではなく、これらの運送運搬手段による運輸事業によって生み出された「価値」を比較している。
こうみると、運送運搬手段が生み出す価値の60%以上は、道路運送から生み出されたものであることが分かる。ここには、貨物運送と旅客運送が含まれており(道路運送は、公表している貨物運送と旅客運送のデーを加重平均して試算)、構成比として大きいのは、貨物運送で、道路運送のうち、4分の3を貨物運送が占めている。
この道路運送に次ぐのが、ほぼ4分の1の鉄道業だ。
船舶輸送である水運業、飛行機輸送である航空運輸業は4%程度を占めるに留まっている(なお、国際輸送の場合、海外の事業者による分は、この指標には反映されていない)。
活動レベルでは、航空運輸業の伸びが著しい
では、それぞれの運搬運送手段ごとの活動レベルは、どう変化しているのだろうか。
下のグラフは、2010年を100として、各年の活動レベルをその2010年に対する比率で数値化したグラフだ(これを指数と言う)。
グラフの推移をみると、まずは2008年、2009年とリーマンショック等の金融ショックによる産業活動の停滞を反映して、全般的に運送業の活動が低下し、その後、緩やかに上昇している。
その中で、特徴的な動きを見せているのが、航空運輸業で、東日本大震災のあった2011年に他の運送運搬手段に比べて、航空運輸業は1割を超える低下を見せた。やはり、国際旅客、国際貨物が大きく低下している。しかし、その後の6年ほどの間は、他の運送運搬手段に比べて大きく上昇し、2017年の暫定値としては、2010年に対して3割増しになっている(「2017年暫定値」とは、2017年1月から10月までの季節調整値を単純平均した値)。
他方、水運業は、2013年から緩やかに活動レベルを低下させている。そもそも、2013年の値も2008年のレベルを下回っている。特に、低下しているのは、外航貨物だ。2010年の100を下回ってはいないが、外航貨物は2017年の暫定値で100.8で、ほとんど2010年のレベルに低下している。
構成比はあまり変化していない
運送運搬手段別の活動レベルの推移をみると、航空、水運で動きが見られた。そこで、改めて2017年暫定値で、運送運搬手段別の発生付加価値の構成比を確認してみる。
すると意外なことに、構成比はあまり変化していなかった。
活動レベルを変化させた航空と水運は、元来ウェイトが小さいことから、それぞれの活動レベルが変化しても、運輸業全体に占める構成比には余り変化が見られなかった。
こういった運送運搬手段の生み出す価値の構成比の安定度合いをみると、国内の物流や人の移動を支えている、道路と鉄道というインフラが、当面は、運送運搬手段の中軸ということなのかも知れない。
関連情報
道路、鉄道、航空、水運など運送手段のボリュームの変遷;2008年と2017年暫定値との比較