METI解体新書

「ファンを増やしたい」が広報の原動力に

経済産業省 大臣官房広報室 川森 敬太室長補佐(総括)

【大臣官房広報室】
 突然ですが、この記事を読んでくださっている皆さんは、経済産業省が何をしている組織か、ご存じですか?

 たとえ職員でも、パッと答えられる人は少ないかもしれません。経済産業省の役割はなんと「設置法」という法律で定められていて、これによると、経済産業省の業務は、「経済構造改革の推進に関すること」から始まって、全部で60項目もあるんです。

政策分野の幅広さと、伝えることのむずかしさ

 扱っている政策課題は様々で、「エネルギー・環境」や「デジタル」、「中小企業」など、誰もが1度は聞いたことのあるテーマもあれば、特定の業種や業態に固有のものなど、一般の方の目にほとんど触れる機会のないテーマもあります。

 経済産業省では、こうした様々な分野で日々たくさんの政策が議論され、生まれています。経済産業省が発出しているニュースリリースは、1日におよそ3~5本、1か月におよそ100本、年間で1,000本以上にもなるんです。

 でも、このように発信されていく大量の情報が、経済産業省の政策を十分に分かりやすく伝えているかというと、残念ながらそうとは限りません。「資料に文字が多すぎて読めない」、「カタカナ言葉でごまかすな」といったお叱りをいただくことも日常茶飯事です。

 手塩にかけて作り込んだ政策を、誤解のないよう、法律や決定文書の隅々まで余すことなく発信したいという政策担当者の思いと、「手に取って、見て、理解してもらえなければ意味がない」という広報担当者の思いがぶつかることも少なくありません。

「近寄りがたい存在」

 以前、ヒアリングをさせていただいた中小企業の方に、「国家公務員の方って、意外と普通なんですね」と言われたことがあります。

 これまで国家公務員と話をする機会がなく、まるでロボットのように、何を考えているのかわからない、近寄りがたい存在というイメージがあったそうです。

 経済産業省の情報発信が十分でなく、政策や、メッセージが縁遠いままである証拠の1つかもしれません。

福島で学んだ2つの大切なこと

 福島の復興に関する業務を担当していた時、2つの意味で、情報発信の大切さを感じさせられた出来事がありました。

 1つは、丁寧に説明することの大切さ。地元の方々とお話をさせていただく中で、エネルギー政策を推し進めてきた立場として、大変厳しいお言葉をたくさんいただきました。それでも、繰り返し、心を込めて説明を重ねることで、「あなたが言うなら」と有難い言葉をかけていただけたことがありました。

 もう1つは、発信がきっかけで、世の中や人を動かすことができるということ。地域の復興に向けた活動に一緒に取り組ませていただく中で、誰より自分自身が福島のファンになりました。復興が進む様子や、復興に向けて頑張る方々の姿を、国内外の1人でも多くの方に知ってもらうことで、自分のように、福島産品を食べてみたい、飲んでみたい、福島を訪れてみたいという人が増え、さらに復興を推し進めるんだと実感しました。

 ちなみに、とっても小さなことですが、私の影響で実家の両親は福島の桃のファンになりました!オリンピック期間中、福島の桃が世界中の注目を集めたことも本当に嬉しいニュースでした。

 そうした経験が、経済産業省の政策を、1人でも多くの方に、わかりやすく伝えたいというモチベーションに繋がっています。

息子から教わった「みんなに、わかりやすく、伝える」こと

 小学生の息子に、お父さんは、仲間の仕事をみんなに伝えるのが仕事だと説明したら、息子は学校で新聞係をやるようになりました。1枚の画用紙の中で、レイアウトや色使いを工夫して見栄えよく仕上げているのには感心しました。クイズを盛り込むなど、読者を飽きさせない仕掛けにも抜かりがありません。

 「子供にも伝わるように、分かりやすく」といつも肝に銘じて仕事をしているつもりですが、逆にお手本を見せつけられた瞬間でした。

 まだまだ力及びませんが、厳しいご意見もいただきながら、少しずつでも、より良い発信を目指していきたいです。