統計は語る

コロナ禍で活況のゲームソフト産業、今後の見通しは?

巣ごもり需要で売上が伸びたゲームソフト業界

 2020年は世界的に大流行した新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの産業が苦境に陥った一方で、生活様式の変化がプラスに働き、売上を伸ばした産業もある。

 その一つが、ゲームソフト産業だ。2020年4月の緊急事態宣言が発出された時期に、Nintendo Switchソフト「あつまれ どうぶつの森」が爆発的にヒットしたことは、記憶に残っている方も多いのではないか。

 第3次産業活動指数のゲームソフト指数を確認すると、2020年4月に大幅に上昇していることが確認できる。

 また、任天堂が公表しているNintendo Switchソフトの販売本数を見ると、感染症の影響が大きかった2020年4月~2021年3月における販売本数は、「あつまれ どうぶつの森」が群を抜いていることが分かる。

 一方で、その販売は国内だけでなく、海外でも大きく伸びており、世界的な人気であったことが見てとれる。

ゲームソフト販売の主戦場は海外市場へ

 「あつまれ どうぶつの森」は国内よりも海外での売上本数が多くなっているが、前述に示したグラフにもあるとおり、売上本数の高いソフトは、国内販売数よりも海外販売数の方が断然多くなっている。

 国内のゲームソフトメーカーの売上高は、右肩上がりとなっており、コロナ禍の2020年においても順調に売上を伸ばしている。

 一方で、国内のゲームソフト市場は減少傾向となっているが、国内メーカーの売上高は、国内市場規模を大きく超える額となっており、売上の多くは海外市場で稼ぎ出しているものと考えられる。

ゲームスタイルの変化が産業構造の変化へ

 海外市場が主戦場となっているゲームソフト産業だが、海外のゲームソフト市場規模は、前述のグラフにあるとおり、減少傾向となっている。

 ゲームソフト産業が活況に見える影で、市場規模自体が縮小している背景には、消費者のゲームに向き合うスタイルの変化が要因の一つとして考えられる。

 現在、様々なゲーム機が全世界で販売されており、最も販売台数が多いゲーム機は、携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」となっている。国内においても、家庭用ゲーム機の保有率のトップは携帯型ゲーム機であるとの調査結果もある。

 ゲームの楽しみ方が、家庭でじっくり楽しむよりも、電車での移動時間や待ち時間といった合間の時間を使って楽しむスタイルに変化していることが、携帯型ゲーム機が広く普及した要因とも考えられる。

 ゲームの楽しみ方の変化は、ゲームソフト市場の構造にも大きな変化をもたらしている。これまで、ゲームソフトは、専用ゲーム機で使用するものが中心だったが、現在は、スマートフォンを始めとしたスマートデバイス用のゲームアプリが伸びており、その市場規模は、専用ゲーム機向けのゲームソフト市場の8倍以上の規模となっている。

 また、スマートデバイス用ゲームアプリの市場規模は、世界的にも拡大しており、2015年は日本が最大の市場だったが、2019年では、1位中国、2位アメリカ、3位日本と、日本以外の市場が拡大している。

 このような流れが進むことによって、ゲームソフト産業がどのように変化をしていくのかが注目すべきポイントと考えられる。