経営戦略と連動した「ヒト」の活かし方
企業の価値創造の源となる、「ヒト」。今年6月、コーポレートガバナンス・コードが改訂され、中核となる人材の多様性の確保や、経営戦略と整合した「ヒト(人的資本)」への投資が重要であることなどが新たに示されました。今後、企業の経営陣は、中長期的に企業の価値を向上させていくために、「ヒト」の活かし方(人材戦略)を見直していくことが求められていきます。
企業にとって「ヒト」が重要な理由
経営戦略の実現を支える存在がまさに「ヒト」である中、経営課題と人材戦略上の課題は直結しています。実際、取締役の多くは優先的に取り組む課題として人的資本経営を挙げています。機関投資家も、優秀な人材の確保や企業の将来性への期待を理由に、企業の「ヒト」に関する取組に着目しています。一方、人材戦略と経営戦略が紐づいていないことを課題とする企業が多いのが実情です。
「人材版伊藤レポート」のメッセージ
経営戦略と人材戦略をどのように連動させるのか。経済産業省では、持続的な企業価値の向上に向けた人的資本経営のあり方について議論し、昨年9月末に「人材版伊藤レポート」※として公表しました。人材戦略の変革の方向性や、経営陣、取締役会、投資家が果たすべき役割、人材戦略に共通する視点や要素などをまとめています。
※「人材版伊藤レポート」とは、持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会(伊藤邦雄 一橋大学CFO教育研究センター長 座長)報告書の通称です。
企業に求められる「人材」に関する情報開示
経営戦略と連動した人材戦略をせっかく作っても、実際に働く人に伝わらなければ効果が現れず、投資家からも評価がされません。有識者による議論も踏まえ、今回のコーポレートガバナンス・コードの改訂では、人的資本への投資について経営戦略との整合性を意識して情報の開示を行うことなどが盛り込まれました。今後は、中長期的な企業価値の向上という観点から、人材戦略についてどのように考えているか、企業に問われることになります。
「人的資本経営」の社会実装に向けて
この動きを実際の取組につなげていくため、経済産業省では、経営陣をはじめとする各ステークホルダーの取組を後押しする仕掛けや、人的資本経営における課題の打開策、政府に求められる役割について議論する検討会を立ち上げました。こうした取り組みを通じ、企業の価値創造につながる人的資本経営の社会実装を目指していきます。
経済産業省 産業人材課
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