政策特集エネルギー vol.2

エネルギーをどう安定的に確保するか

安全保障の視点から


日々の生活や、企業の生産活動、さまざまな社会インフラなど、そのどれもが、エネルギーがなければ成り立たない。それも24時間、365日、安定して供給されることが大前提であり、まさに人々の生活・生命を支えている。しかし、半世紀前のオイルショックを振り返れば分かるように、自らではコントロールしようがない外部環境の変化によって、安定供給は常に脅かされる恐れがあるのも事実。そこでカギとなるのがエネルギー安全保障の視点だ。

自給率はわずか8%

2016年度に38%を記録した、わが国の食料自給率(カロリーベース、生産額ベースでは68%)。先進国の中でも最低水準で、過去最悪だった1993年度に37%を記録して以来となる、23年ぶりの低水準と言われた。しかし、エネルギーの自給率の低さは実はこの比ではない。実際、2016年度はわずか8%。一部の原子力発電所が再稼働し、前年に比べれば若干回復した結果がこれだ。

わが国にとってエネルギーの安全保障は無視できない問題であり続けている。たとえば第4次中東戦争に端を発した、1973年の第一次オイルショック。中東の産油国が原油価格を大幅に引き上げたことで世界中を揺るがしたが、日本ではモノ不足や急激なインフレーションで社会が大きく混乱した。この時、1次エネルギーの75%を石油に頼り、その8割近くを中東からの輸入に依存していた。エネルギー自給率は9.2%にすぎなかった。

日本の原油輸入先

輸入に頼る化石燃料

エネルギー安全保障には、エネルギー自給率を高めることが最短の道である。しかし化石燃料を輸入に頼らざるを得ない現状では選択肢は限られる。そこでオイルショック後に期待がかかったのが原子力発電だった。ウランそのものは輸入に頼るものの、エネルギー密度が化石燃料と比べてケタ違いに高いため長期間にわたる備蓄が可能。事実上、国産エネルギーとして計算できる。原子力発電の整備が進んだことで、東日本大震災前の2010年度には原子力発電を含む自給率は20%近くに達した。

日本のLNG輸入先

自給率の向上だけでなく、エネルギー資源の多様化も必要だ。たとえば、同じ化石燃料でも天然ガスは、東南アジアやオーストラリアなど、石油に比べて、より日本に近く政情が安定している地域から輸入できるのがメリット。また、石炭は賦存地域が世界中にひろく分散している。多様なエネルギー資源を多様な地域から調達すれば、一部地域で混乱があったとしても供給が途絶えるリスクは軽減できる。

日本の石炭輸入先

再エネにも期待

国産エネルギーとしては、太陽光や風力、地熱など再生可能エネルギーへの期待も高まるが、再生可能エネルギーが2016年度の1次エネルギーに占める割合は7%にもとどかないのが現状だ。水力を加えたとしても10%程度だ。加えて原子力発電も、東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故を受けて、安全対策を最優先に取り組んでいるところだ。そのため今後も化石燃料が主要なエネルギー源である状況に変わりはない。

そこで重要となるのが、産油国など資源国と良好な関係を構築しておくことである。わが国でもオイルショック後は、産油国に対するさまざまな支援や協力のため、支援組織や研究機関が官民協力のもと立ち上げられた。特に近年、石油産業に依存する経済からの脱却を図る中東産油国に対し、教育や医療など、幅広い分野での協力を行っている。わが国は現在も石油、天然ガスはほぼ全量を輸入し、石油については86%を中東に依存している。中東は、域内の生産量・埋蔵量が大きい一方、消費量が小さく輸出余力があるため、国際的な需給逼迫時に重要な役割を果たす。中東諸国との関係構築や、それを通じた権益獲得の必要性は依然として変わらない。

石油消費国として新興国が台頭

近年、中国やインドなど新興国が急成長を遂げ、巨大な石油消費国として台頭している。一方、米国ではシェールオイルやシェールガスの開発が進む「シェール革命」が起きるなど、エネルギー資源を巡る国際情勢の動きは目まぐるしい。資源の大半を輸入に頼らざるを得ない日本にとって、エネルギー安全保障の重要性がますます強まるばかりである。
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