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危機を乗り越える中小企業・小規模事業者

 中小企業庁は、2021年版中小企業白書・小規模企業白書を公表しました(書店にて発売中)。本白書では、新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)が中小企業・小規模事業者に与えた影響や、この危機を乗り越えるための重要な取り組みとして、事業環境の変化を踏まえた事業の見直し、デジタル化、事業承継・M&Aなどの分析や事例を豊富に紹介しています。

危機を乗り越える力

 感染症流行下においても、事業環境の変化に合わせ、柔軟な対応ができている企業ほど回復が早い傾向にあります。事業環境の変化を転機と捉え、顧客のニーズや自社の強みに着目し、新製品の開発や新事業分野への進出をするなど、事業見直しの動きもあります。その際、まずは経営戦略の基礎となる財務指標に基づく経営分析を行うことが重要です。

 また、感染症流行により、中小企業のデジタル化に対する意識が高まっています。デジタル化に対する社内の意識が高いほど、業績にプラスの影響を及ぼすという調査結果もあります。

 感染症流行や経営者の高齢化の進展により、2020年の廃業件数は過去最多となりました。その中には高い利益を生み出していた企業も含まれます。経営資源をいかし、新たな取り組みへのチャレンジを促すため、事業承継は重要です。近年、M&Aに対するイメージも向上し、件数も増加しています。

消費者の意識変化と小規模事業者の「底力」

 感染症流行により消費者の意識・行動は変化し、地元での消費やオンラインショッピングの利用が増えています。小規模事業者の顧客との関係作りもオンラインツールを活用した取り組みが増え、新たな需要を獲得する事業者もいます。

 また、地域のつながりを大事にする小規模事業者は、感染症流行下でも売上げの維持につながっている傾向にあります。

危機を乗り越え、再び確かな成長軌道へ

 感染症により経営環境は大きく変化し、企業経営は引き続き厳しい状況にあります。本白書の分析や事例の紹介を通じて、中小企業・小規模事業者の皆様が今後を見据えた経営戦略を展開し、再び安定と成長につながっていくこととなれば幸いです。

中小企業庁調査室

 

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