60秒早わかり解説

アジアから誰もが最低限の医療を享受できる社会へ

アジアDXに挑む「メドリング」

EYとMETIで共催した約500名参加のセミナーでの説明の様子

 経済産業省は、成長戦略実行計画(令和2年7月17日閣議決定)に位置づけられているように、日本企業がアジアの新興国企業と連携し、デジタル技術を活用して社会課題を解決するための新産業創出「アジアDX」を後押ししている。そのパイオニア的な存在、メドリングはアジアでデジタル技術を活用したスマートクリニックを展開している。

最低限の医療を、いつでも、どこでも、安価に

 ベトナムでは、医療の質にばらつきがあり、国民が地域のクリニックを信頼していないため、患者が大病院に集中し、さらに医療従事者も患者の多い大病院に集中する「医療偏在」を招いている。同社は日本の医療ノウハウにAIなどのデジタル技術を活用することで、身近に安価で質の高い医療を提供できるクリニックを設立し、医療の質の平準化を目指している。

 この事業は経済産業省が日本貿易振興機構(ジェトロ)を通じて採択した「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」として実施しており、同社は2020年10月、菅総理大臣がベトナムを訪れた際に行われた協定文書交換式にもベンチャー企業で唯一参加、ベトナムにおいて医療関連事業を手がけるJVHB社と覚書を締結し、スマートクリニック運営に関する業務支援等で連携することに合意した。

文書交換式の様子(前方左がメドリングのCuong氏。後方に日越両首相)

アジアはDXとの親和性が高い

 同社は、ウェブ問診や電子カルテ等のデジタル技術を活用し、診療データを蓄積させ、診断AIの開発を進めている。アジア新興国は、医療の質の低さを背景に、AIの活用に好意的であり、診療データの扱いも厳格ではない。アジアが成長市場であることも踏まえ、「デジタル技術を活用した新事業の創出は日本よりアジアを舞台にする方が起こしやすく、かつ事業の広がりもある」と代表取締役CEOの安部一真氏(写真)は語る。

 また、現地での事業展開においては、「現地パートナーとの共創は必須。現地の法規制や商慣習を熟知しており現地ビジネス展開に重要な知見を提供してくれる」という。

アジアDXの挑戦を政府も応援

 経済産業省は、アジアDX関連事業に関する実証事業の支援のほか、日本貿易振興機構(ジェトロ)を通じて、オンラインを活用したマッチング、ウェビナーなどの開催や、海外政府との調整、広報支援などのメニューを用意している。詳しくは、経済産業省HP、及びジェトロDXポータルを参照してほしい。

 

【関連情報】
令和元年度補正予算「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」の採択結果

アジアDXプロジェクト(経済産業省HP)

ジェトロ DX ポータル