統計は語る

改善続く企業の生産マインド 緊急事態宣言の延長の影響懸念も


 経済産業省では、毎月初旬に、主要製品の生産計画を調べている。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象に、その月と翌月の生産計画を調査している。
 今回は、1月初旬に調査した1月と2月の生産計画の状況と、1月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのかを紹介する。

1月の生産計画とその補正値

 1月の生産計画は、季節調整済指数で前月比8.9%の上昇を見込むという結果になった。この計画どおりに生産されれば、1月の鉱工業生産の実績は、3か月ぶりの前月比上昇となる。
 2月の生産計画は、この1月の計画からマイナス0.3%の低下という計画になっている。
 なお、今回の調査結果については、1月当初の生産計画に基づくものであるため、1月上旬以降の、感染症拡大に対応した緊急事態宣言の発出やその後の対象地域拡大等の情勢変化の影響は十分には織り込まれていないと考えられる。そのことに留意して今回の調査結果をみる必要がある。

 毎月、生産計画に対して生産実績は下振れする傾向にある。そこで、調査月の生産計画については、生産実績との間で生じる「ずれ」を統計的に推計し、補正計算を行っている。今回、1月の見通しについて計算したところ、1月は、前月比4.4%程度の上昇になるという結果だった。

生産計画の伸びを当てはめた鉱工業生産のグラフ

 生産計画の伸びを2月までの鉱工業生産指数に当てはめてグラフ化すると下のようになる。
 昨年12月の鉱工業生産指数実績(確報)は93.8であるため、調査結果の伸び率8.9%をそのまま当てはめれば、1月の指数水準は102.1となる見込みである。
 さらに、2月の生産計画は、前月比マイナス0.3%低下の見込みであることから、仮に1月の生産が計画通りであったとすると、2月の指数水準は101.8となる。
 ただし、生産計画に対し生産実績は下振れするという傾向的なバイアスがあるため、このバイアスを過去の傾向に基づき補正すると、1月の伸び率は4.4%程度となり、この場合、1月の指数水準は97.9と見込まれる。
 また、2月の生産計画も同様のバイアスがあることを考えると、2月の指数水準は、調査結果より低下することが考えられる。
 なお、冒頭述べたように、今回の調査結果には1月上旬以降の情勢変化の影響は十分には織り込まれていないと考えられる。このため、緊急事態宣言の発出やその後の対象地域拡大の影響などにより、上の過去の傾向より生産が下振れするリスクに十分注意する必要がある。

生産計画の強気と弱気

 生産計画を、前年同月の実績と比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかを判断する一つの目安となる。
 1月の生産計画を原指数で見ると、前年同月実績比マイナス0.2%となり、2か月ぶりにマイナスとなった。
 生産計画は、今回、前年同月実績比がマイナスとなったものの、昨年2月から11月まで続いた前年同月実績比マイナスと比べそのマイナス幅は小さいことから、11月以前よりも企業の生産マインドは改善していると考えられる。

 また、1か月前時点で調べた生産計画が、生産開始直前に調べた生産計画と比べ、どの程度変動したかを示す数値が予測修正率となる。
 1月の予測修正率はプラス0.7%と、2か月連続の上方修正となり、この数値からは、企業の生産マインドは改善の動きにあるものと考えられる。

 生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでいる。この指標は、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量るために活用している。
 この指標の推移とこれまでの景気循環を重ねると、おおむねマイナス5を下回ると景気後退局面入りしている可能性が高いという傾向がみられている。
 一方、生産計画の1月調査結果では、アニマルスピリッツ指標は4.3と6か月連続でプラスとなった。月々の上下動をならしたトレンドでも大きくプラスとなっており、生産マインドには依然強気が優勢な様子がみられる。

 1月調査では、強気の割合は2.2ポイントの低下、弱気の割合は2.3ポイントの上昇となったことにより、アニマルスピリッツ指標は前月から低下となった。ただし、強気の割合は30.8、弱気の割合は26.6と、6か月連続で強気が弱気を上回り、アニマルスピリッツ指標はプラスとなっている。
 昨年6月以降、国内外での経済活動の回復が進んできたことにより、企業の生産マインドの改善も進んだが、引き続き、企業の生産マインドは強気が優勢な結果となっている。

 1月の調査結果では、前年同月実績比のマイナス幅は小さく、予測修正率やアニマルスピリッツ指標もプラスとなっていることから、企業の生産マインドは強気が優勢な状況が続いているとみられる結果となっている。
 他方で、今回の調査実施以降も、感染症は内外で再拡大し、先般2月2日には緊急事態宣言の3月7日までの延長が決定された。こうした情勢変化により、生産の先行きや企業のマインドにも影響が生じないか、2月以降の調査でも注視していきたい。