7月の鉱工業生産 2か月連続上昇 基準内最大の上げ幅もなお低水準
持ち直しの動きに期待
本年7月の鉱工業生産は、季節調整済指数86.6、前月比8.0%と、2か月連続の前月比上昇となった。7月当初の企業の生産計画では前月比11.3%上昇、これに含まれる過去のバイアスを補正した試算値では、最頻値で前月比3.1%の上昇となっていたが、試算値を大幅に上回る上昇となった。
生産は、2月以降新型コロナウイルス感染症の影響が現れ、5月まで4か月連続での低下となり、指数水準も大幅に低下していたが、6月、7月と連続で上昇した。特に7月の上昇幅は、今基準内で最大となっている。ただ、7月の指数値86.6は、今基準内で4番目の低水準にあり、依然低い生産水準にとどまっている。
自動車工業の上昇大きく
7月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、12業種が前月比上昇、3業種が前月比低下という結果だった。
7月は、特に自動車工業の上昇寄与が大きく、次いでその他工業、鉄鋼・非鉄金属工業などが上昇に寄与した。
上昇寄与の最も大きかった自動車工業は、前月比38.5%の上昇で、2か月連続での大幅な上昇となった。普通乗用車、駆動伝導・操縦装置部品、自動車用エンジンなどが上昇要因となっている。新型コロナウイルス感染症の影響で、大幅な生産調整が行われていた乗用車の生産が回復しており、それに伴い、部品の生産も増加したことが上昇の要因としてあるようだ。
上昇寄与2位のその他工業は、前月比9.0%の上昇で、6か月ぶりの大幅な上昇だった。乗用車用タイヤ、工業用ゴム製品などが上昇要因となっている。乗用車や自動車部品の生産回復に伴う生産の増加等が上昇の要因としてあるようだ。
上昇寄与3位の鉄鋼・非鉄金属工業は、前月比9.7%の上昇で、5か月ぶりの上昇だった。ダイカストや鉄系鍛工品、銑鉄鋳物などが上昇要因となっている。自動車向けの生産の増加が上昇の要因にあるようだ。
出荷は前月比6.0% 大幅な上昇
7月の鉱工業出荷は、季節調整済指数85.3、前月比6.0%と、2か月連続の大幅な上昇となった。今基準内で最大の上昇幅となっている。国内外での経済活動の再開の動きに伴い、内需・外需とも回復が見られたことが、出荷の上昇につながったものと考えられる。
業種別にみると、全体15業種のうち、12業種が上昇、3業種が低下となった。
上昇寄与業種としては、寄与度の大きい順に、自動車工業、鉄鋼・非鉄金属工業、電気・情報通信機械工業などとなった。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財の出荷は前月比10.2%の上昇、最終需要財の出荷は前月比2.1%の上昇だった。
最終需要財の出荷について内訳ごとにみると、まず消費財については、出荷は前月比8.7%、2か月連続の上昇となった。特に耐久消費財の出荷が、乗用車の大幅上昇の影響が大きく、前月比24.7%と、2か月連続の上昇となった。非耐久消費財の出荷は前月比0.4%と、2か月連続の上昇となった。
一方、設備投資に使われる財である資本財(輸送機械を除く)の出荷は、前月比マイナス0.9%と、2か月ぶりの低下となった。
また、建設財は、前月比0.8%と、2か月連続の上昇となった。
在庫は4か月連続低下
7月の鉱工業在庫は、季節調整済指数99.2、前月比マイナス1.6%と、4か月連続の低下となった。本年4月まで高めの水準が続いていた在庫だが、その後生産調整が進められるなかで、在庫調整も進んでいるようである。
業種別にみると、15業種のうち、13業種が低下、2業種が上昇となった。低下寄与が大きかった業種としては、鉄鋼・非鉄金属工業、無機・有機化学工業、化学工業(無機有機化学工業・医薬品を除く)などが挙げられる。
基調判断「生産は持ち直しの動き」
本年7月の鉱工業生産は、2か月連続の前月比上昇となった。生産は、新型コロナウイルス感染症の影響で2月以降、5月まで低下が続いていたが、この生産の低下傾向は一旦底を打ち、6月,7月と上昇が続いている。
この背景には、5月まで感染症の影響により、自動車工業を始めとして大幅な生産調整が行われていたが、国内外での経済活動再開の動きに伴い、需要の回復等も進み、7月も生産調整からの回復により生産が上昇したと考えられる。生産水準は依然低いとはいえ、幅広い業種で生産に上昇がみられる。
また、先行きに関しては、企業の生産計画では8月、9月は上昇となっている。企業の生産計画に元々含まれている上方バイアスを考慮すると、先行きは7月ほどの勢いのある上昇が続くとは考えにくいものの、当面、持ち直しの動きが続くことが期待されるところである。一方で、最近の感染症の感染再拡大の影響などについても引き続き注意してみていく必要がある。
こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の7月の基調判断については、6月の「生産は下げ止まり、持ち直しの動き」から「下げ止まり」の表現は削り、「生産は持ち直しの動き」が続いているものと評価する。他方で、8月以降の生産の動向についても十分注意してみていきたい。
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