統計は語る

6月の鉱工業生産 5か月ぶりに上昇 自動車など生産調整が進展

今後の持ち直しにも期待


 本年6月の鉱工業生産は、季節調整済指数80.8、前月比2.7%と、5か月ぶりの前月比上昇となった。6月当初の企業の生産計画では前月比5.7%上昇、これに含まれる過去のバイアスを補正した試算値では、最頻値で前月比0.2%の上昇となっていたが、試算値を大幅に上回る上昇となった。
 生産は、2月以降新型コロナウイルス感染症の影響が現れ、4か月連続での低下となり、指数水準も大幅に低下していたが、6月は上昇に転ずることとなった。6月の季節調整済指数80.8は、今基準内で2番目の低水準にあるものの、上昇幅は今基準内で2番目の上昇幅となっている。
 一方、四半期ベースでは、本年第2四半期は前期比マイナス16.7%の低下となり、今基準内で最大の低下幅となった。

15業種中10業種が上昇

 6月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、10業種が前月比上昇、5業種が前月比低下という結果だった。
 6月は、特に自動車工業の上昇寄与が大きく、次いで生産用機械工業、プラスチック製品工業などが上昇に寄与した。

 上昇寄与の最も大きかった自動車工業は、前月比28.9%の上昇で、5か月ぶりでの大幅な上昇となった。普通乗用車、軽自動車、自動車用エンジンなどが上昇要因となっている。新型コロナウイルス感染症の影響で、大幅な生産調整が行われていたところから、6月は生産を戻しつつあることや、海外からの部品調達も改善されてきていることなどが上昇の要因としてあるようだ。
 上昇寄与2位の生産用機械工業は、前月比10.2%の上昇で、2か月ぶりの大幅な上昇だった。ショベル系掘削機械、フラットパネル・ディスプレイ製造装置、金型などが上昇要因となっている。感染症の影響による生産調整からの回復や、受注の増加が上昇の要因としてあるようだ。
 上昇寄与3位のプラスチック製品工業は、前月比6.4%の上昇で、4か月ぶりの上昇だった。プラスチック製機械器具部品やプラスチック製容器(中空成形)などが上昇要因となっている。受注の増加が上昇の要因にあるようだ。

出荷は生産上回る大幅上昇

 6月の鉱工業出荷は、季節調整済指数80.8、前月比5.2%と、4か月ぶりの大幅な上昇となった。今基準内で最大の上昇幅となっており、6月の出荷は、生産より大幅な上昇となった。国内外での経済活動の再開の動きもあり、内需・外需とも前月比で増加したことが、出荷の上昇につながったものと考えられる。

 業種別にみると、全体15業種のうち、12業種で出荷が上昇、3業種で低下となった。
 上昇寄与業種としては、寄与度の大きい順に、自動車工業、輸送機械工業(自動車工業を除く)、生産用機械工業などとなった。
 財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財の出荷は前月比3.7%の上昇、最終需要財の出荷は前月比7.1%の上昇だった。
 最終需要財の出荷について内訳ごとにみると、まず消費財については、出荷は前月比6.5%、4か月ぶりの上昇となった。特に耐久消費財の出荷が、乗用車の大幅上昇の影響が大きく、前月比21.7%と、5か月ぶりの上昇となった。非耐久消費財の出荷は前月比4.1%と、4か月ぶりの上昇となった。
 一方、設備投資に使われる財である資本財(輸送機械を除く)の出荷は、前月比6.5%と、2か月ぶりの上昇となった。
 また、建設財は、前月比2.0%と、4か月ぶりの上昇となった。

在庫は3か月連続で低下

 6月の鉱工業在庫は、季節調整済指数100.8、前月比マイナス2.4%と、3か月連続の低下となった。6月は出荷が大きく上昇するとともに、在庫調整が行われたことが、在庫の低下要因として考えられる。
 業種別にみると、15業種中、13業種が低下、2業種が上昇だった。低下寄与が大きかった業種としては、自動車工業、電子部品・デバイス工業、鉄鋼・非鉄金属工業などが挙げられる。

 在庫循環図をみても、在庫は減少してきており、このところの生産調整により、在庫調整が進んできている様子が感じられる。

基調判断を上方修正

 本年6月の鉱工業生産は、5か月ぶりの前月比上昇となった。新型コロナウイルス感染症の影響で2月以降、生産の低下が続いていたが、6月は上昇に転じ、生産水準は低いものの、今基準内で2番目の上昇幅での上昇となった。
 この背景には、5月まで感染症の影響により、国内外での需要が低迷したことなどから、自動車工業を始め大幅な生産調整が行われていたが、国内外での経済活動再開に伴い、需要の回復や供給制約の解消も徐々に進み、6月は生産に回復の動きが現れたものと考えられる。
 また、先行きに関しては、企業の生産計画では7月、8月は上昇となっている。感染症の影響については引き続き注意してみていく必要はあるものの、企業の生産計画に元々含まれている上方バイアスを考慮しても、7月は上昇が見込まれ、持ち直しの動きが続くことが期待される。
 こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の6月の基調判断は、「生産は下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」と上方修正し、7月以降の生産の動向についても、注視していきたい。

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