5月の鉱工業出荷 3か月連続で最低水準を更新
サプライチェーンの混乱など懸念 回復にはなお時間
本年5月の鉱工業出荷は、季節調整済指数で77.2、前月比マイナス8.4%と3か月連続の低下だった。内需(国内向け出荷)は前月比マイナス8.2%の低下、外需(輸出向け出荷)は前月比マイナス9.1%の低下と、ともに3か月連続の低下だった。国内向け・輸出向けともに2015年基準の最低水準を3か月連続で更新した。
出荷水準をみると、まず国内向け出荷指数については、5月の指数値は79.2となった。国内向け出荷は、昨年10月に大幅に低下し、小幅な回復が続いたものの低い水準で推移し、3月に低下に転じたあと、4月、5月と大幅な低下となった。
輸出向け出荷指数は、5月の指数値は70.6となった。輸出向け出荷は、2018年後半以降、低下傾向が続いており、2月は4か月ぶりに上昇に転じたものの、3月、4月、5月と3か月連続で大幅に低下した。新型コロナウイルス感染症の影響により、内外ともに需要が大きく低下したことを反映したものと考えられる。
国内向けは鉄鋼・非鉄金属工業の低下大きく
5月の国内向け出荷の業種別動向をみると、12業種すべてが前月比低下だった。特に低下寄与が大きかったのは鉄鋼・非鉄金属工業だった。なかでも熱間圧延鋼材、非鉄金属精錬・精製品などが低下した。
それに次ぐ低下寄与をみせたのは輸送機械工業だった。なかでも車体・自動車部品、乗用車等が低下した。
低下寄与の業種別内訳をみると、4月は輸送機械工業が特に低下したのに対し、5月は輸送機械工業以外にも幅広い業種で大きく低下しており、感染症の影響が国内でも様々な業種に波及したことがわかる。
5月の輸出向け出荷の業種別動向をみると、国内向けと同様に12業種すべてが前月比低下となった。特に低下寄与が大きかったのは輸送機械工業だった。なかでも乗用車、船舶・同機関などが低下した。
次いで、石油・石炭製品工業の低下寄与が大きくなった。なかでも石油製品が低下した。
需要先用途別の動向は
5月の需要先別用途別分類(財別分類)の国内向け/輸出向け出荷の動きを比較してみる。
まず、製造業の中間投入となる鉱工業用生産財については、国内向け出荷は前月比マイナス13.3%と3か月連続の低下だった。輸出向け出荷も前月比マイナス8.0%と3か月連続の大幅低下だった。国内・海外ともに鉱工業の生産活動が低迷したこともあり、生産財の出荷も国内向け・海外向けともに大きく低下したようだ。
設備投資向けとなる資本財(除.輸送機械)については、国内向け出荷は前月比マイナス13.9%と2か月ぶりの低下だった。輸出向け出荷は、前月比マイナス1.2%と3か月連続の低下となった。
建設財については、国内向け出荷は前月比マイナス5.7%と3か月連続の低下だった。輸出向け出荷も前月比マイナス5.6%と3か月連続の低下だった。
消費向けの財では、まず耐久消費財の国内向け出荷は前月比マイナス4.4%と4か月連続の低下となった。輸出向け出荷については、特に乗用車の低下寄与が大きく、前月比マイナス28.7%と3か月連続の大幅低下となった。
非耐久消費財については、国内向け出荷は前月比マイナス3.5%と3か月連続の低下、輸出向け出荷は前月比7.7%と2か月連続の上昇となった。
国内向け、輸出向けそれぞれの財別の寄与度でいうと、国内向け出荷ではすべての財が低下しており、特に生産財が低下に寄与した。
輸出向け出荷では非耐久消費財を除くすべての財が低下し、生産財、資本財等が低下に大きく寄与した。新型コロナウイルス感染症の感染拡大が世界的に企業の生産・販売両面に大きく影響したことも背景にあると考えられる。
経済活動再開で中国向けは上昇も
5月の主要仕向け先別の輸出向け出荷の動きをみると、中国向けは上昇したものの、米国向けなどが低下となった。中国では経済活動再開の動きもあり、2か月連続の上昇となっている。
輸入品、総供給の動向は
一方、輸入の動向をみると、5月は前月比マイナス11.5%と3か月ぶりの低下となった。2月大幅低下のあと、3月、4月と2か月連続上昇したあとの大幅低下となっている。
業種別の動向をみると、13業種中11業種が前月比低下となった。
国産は前月比マイナス8.3%と3か月連続の低下となり、鉱工業総供給も、前月比マイナス9.0%と2か月連続の低下となった。
5月の輸入の低下は、特に鉱業、輸送機械工業が寄与した。輸送機械工業では乗用車や車体・自動車部品などが低下に寄与した。
5月の出荷は国内向け・輸出向けともに大幅に低下し、2015年基準で最も低い水準となった。5月は諸外国でも新型コロナウイルスによる経済活動再開の動きがみられるとともに、我が国の緊急事態宣言も地域ごとに解除されるなどの動きもあったが、依然内外の需要が低迷している。
6月の製造工業生産予測調査からは、6月、7月と生産・出荷は上昇に転ずることが期待されるものの、出荷水準の回復にはまだしばらく時間がかかるものと考えられる。またサプライチェーンの混乱や感染症の第2波等にも注意が必要だ。6月以降も当面、出荷は国内向け・輸出向けとも低い水準が続くものと考えられ、今後それぞれどのように推移していくのかが注目される。
【関連情報】