統計は語る

5月の鉱工業生産 4か月連続で前月比マイナス

自動車の生産調整 幅広い産業に波及


 本年5月の鉱工業生産は、季節調整済指数79.1、前月比マイナス8.4%と、4か月連続の前月比低下となった。5月当初の企業の生産計画では前月比マイナス4.1%低下、これに含まれる例年のバイアスを補正した試算値では、最頻値で前月比マイナス5.7%(90%レンジでマイナス6.6%~マイナス4.7%)の低下となっていたが、試算値を大幅に下回る低下となった。
 生産は、2月から新型コロナウイルス感染症の影響が現れ、2月は前月比マイナス0.3%の低下、3月は同マイナス3.7%の低下、4月は同マイナス9.8%の低下と感染症の影響は急速に拡大してきたが、5月の生産は4月に次いで、大幅な低下となった。5月の季節調整済指数79.1は、再び今基準内の最低水準を大幅に更新した。

15業種すべてが前月比低下

 5月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、すべての業種が前月比低下という結果だった。
 5月は、自動車工業、生産用機械工業、鉄鋼・非鉄金属工業を始め、幅広い業種で大幅な低下がみられた。
 生産は4月、5月と大幅な低下が続いたが、業種別の低下寄与をみると、4月は自動車工業の低下寄与が6割弱と特に大きかったのに対し、5月はその低下寄与は3割程度となっており、生産の低下は4月より幅広い業種に拡大した様子がみられる。

 低下寄与の最も大きかった自動車工業は、前月比マイナス23.2%の低下で、4か月連続での低下となった。原指数でみても前年同月比マイナス61.2%まで低下しており、大幅な生産調整が行われたことがわかる。普通乗用車、駆動伝導・操縦装置部品などが低下要因となっている。新型コロナウイルス感染症の影響で、新型車の需要が低迷しており、部品も含めて生産調整が行われたことが低下の要因としてあるようだ。
 低下寄与2位の生産用機械工業は、前月比マイナス12.0%の低下で、2か月ぶりの大幅な低下だった。フラットパネル・ディスプレイ製造装置、金型、ショベル系掘削機械などが低下要因となっている。4月に上昇した品目の反動減や、感染症の影響で受注が減少したことが低下の要因としてあるようだ。
 低下寄与3位の鉄鋼・非鉄金属工業は、前月比マイナス13.8%の低下で、3か月連続の低下だった。特殊鋼熱間圧延鋼材や普通鋼鋼帯などが低下要因となっている。感染症の影響で受注が減少したことが低下の要因にあるようだ。

出荷は前月比マイナス8.4%の低下

 5月の鉱工業出荷は、季節調整済指数77.2、前月比マイナス8.4%と、3か月連続の大幅な低下となった。5月の出荷は、生産と同様、大きく低下した。

 業種別にみると、全体15業種のうち、すべての業種で出荷が低下した。
 低下寄与業種としては、寄与度の大きい順に、自動車工業、鉄鋼・非鉄金属工業、生産用機械工業などとなった。
 財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財の出荷は前月比マイナス11.0%の低下、最終需要財の出荷は前月比マイナス6.2%の低下だった。
 最終需要財の出荷について内訳ごとにみると、まず消費財については、出荷は前月比マイナス3.6%、3か月連続の低下となった。特に耐久消費財の出荷が、乗用車の大幅低下の影響が大きく、前月比マイナス8.2%と、4か月連続の低下となった。非耐久消費財の出荷は前月比マイナス3.1%と、3か月連続の低下となった。
 一方、設備投資に使われる財である資本財(輸送機械を除く)の出荷は、前月比マイナス9.0%と低下し、2か月ぶりの低下となった。
 また、建設財は、前月比マイナス5.6%の低下となり、3か月連続の低下となった。

在庫は2か月連続低下

 5月の鉱工業在庫は、季節調整済指数103.4、前月比マイナス2.5%と、2か月連続の低下となった。業種別にみると、15業種中、9業種が低下、6業種が上昇だった。低下寄与が大きかった業種としては、自動車工業、鉄鋼・非鉄金属工業、生産用機械工業などが挙げられる。
 5月は特に、自動車工業の在庫の低下寄与が大きくなった。自動車工業に関しては、3月、4月と高い在庫水準が続いていたが、生産調整が行われたことで、在庫水準は再び低下した。これにより鉱工業全体の在庫も低下となった。
 ただ、在庫率に関しては5月も上昇し、3か月連続の上昇となった。出荷が大きく低下したわりには、在庫の水準は未だそれほど低下していないことが背景にある。

 在庫循環図をみても、生産が大きく低下したわりには、在庫はそれほど減っておらず、今後も在庫調整が進むことが期待される。

基調判断は据え置き

 本年5月の鉱工業生産は、4か月連続の前月比低下となった。新型コロナウイルス感染症の影響で2月以降、生産の低下が続いているが、4月に続き、5月も大幅な低下となった。この背景には、感染症の影響により、国内外での需要が低迷し、それにより自動車工業などで大幅な生産調整も行われ、そうした影響が川上までの幅広い産業に波及したと考えられる。指数値は今基準内での最低値を再び大幅に更新し、非常に低い水準へと低下している。
 一方、先行きに関しては、企業の生産計画では6月、7月は上昇となっている。ただ、企業の生産計画に元々含まれている上方バイアスに加え、このところ企業の生産計画を大幅に下回る低下が続いていることも考えると、7月までみれば上昇は期待されるものの、6月も計画のような大幅な上昇となるとは考えにくい。
 こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の5月の基調判断は、「生産は急速に低下している」を据え置き、6月以降、生産は実際にどのように回復していくのか、注視していきたい。

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マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」