政策特集レジ袋有料化 その先の未来 vol.9

リサイクル技術やシステム 社会全体で共有を

澤田道隆会長(花王社長)が語るCLOMAが目指す世界


 地球規模の課題である海洋プラスチックごみ問題の解決に向け2019年に設立されたクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)。プラスチックの製造から使用、廃棄までサプライチェーンに関わる企業が連携し、リサイクルシステムの整備や代替素材の開発など協業を加速することにしている。オールジャパンで推進する意義を会長を務める花王の澤田道隆社長に聞いた。

 -CLOMAは今後の活動のロードマップとなるアクションプランを策定しましたね。

 「CLOMAでは、プラスチック使用量削減に向けて会員各社が連携し、代替素材の開発に寄与する技術情報の共有をはじめ、さまざまな取り組みを始めています。もちろん、これら取り組みは今後も全力を挙げて進めて行かなければなりませんが、それだけではプラスチックごみ問題の根本的な解決にはつながりません。やはり、リサイクルの推進が重要です」

 -例えばペットボトルについては日本ではかなり高度なリサイクルが実現していますが。

 「その通りです。しかし他のプラスチックは焼却によるサーマルリカバリーが中心です。包装容器プラスチック全体の再利用を目指すためには、素材に関する知見、会員者間の多面的な連携および産業界や行政との協力関係が重要であり、CLOMAはそれを促進する組織としての役割を担っています」

多面的な連携が強みを発揮

 -ペットボトルに限らず、日本企業は素材開発やリサイクルの推進などのイノベーションを通じて環境問題への対応を進めてきました。また自治体を中心とする廃棄物の処理体制も確立しています。こうした個々の取り組みを社会全体の仕組みとしてさらに発展、効率化するにはどのような取り組み、視点が必要とお考えですか。また、CLOMAでは「技術開発と社会システムの組み合わせを最適化し、社会実装を加速させる」ことを原則のひとつとして掲げていますが、具体的にどのような活動を目指しているのでしょうか。

 「個々の取り組みを社会全体の仕組みとして発展させるためには、包装容器プラスチック全体の資源ごみ化とリサイクルの集中化が重要と考えます。飲料などに用いられているペットボトルは汚れが少ないですが、その他の包装容器プラスチックは汚れなどが付着している場合が多く、家庭の負担を少なくしながら資源ごみ化できるようにしなければなりません。また、地域によって資源ごみの量も異なるので、各地域で分散してリサイクルを行うことは効率的とは言えません。自治体の壁を乗り越え、集中してリサイクルが行える場所に資源ごみを運べるようにすることも大切になります」

より高度なリサイクルシステムの実現には業種を超えた連携が不可欠と語る澤田会長

 「さらに、リサイクルを進めるには洗浄や粉砕といった技術も不可欠で、プラスチック以外の素材や技術の連携が欠かせません。業種を超えた多面的な連携が図られているCLOMAの強みが発揮できる分野と言えるでしょう」

リサイクルにイノベーションを

 -こうした問題意識は、花王の経営にも反映されているのでしょうか。

 「もちろんです。花王独自のESG(環境・社会・企業統治)戦略『Kirei Lifestyle Plan』を具現化させる第一弾のイノベーションとして、リデュースイノベーション、リサイクルイノベーション、ソーシャルイノベーションを進めています。とりわけプラスチックごみ問題を考えると、リサイクルイノベーションは重要です。花王グループでは、リサイクル科学研究センターを設立し、特に詰め替えパックのリサイクルを進めています。具体的には、地域の方々やパートナー企業と協働し、洗剤やシャンプーなどの使用済みの詰め替えパックを回収し、『おかえりブロック』と名付けたブロックに再生加工します。それをわくわくするような形に組み立て、地域に役立てるという活動です。これを『リサイクリエーション活動』と呼んでおり、多くの自治体が参加してくれています」

回収したつめかえパックが再加工され、市民の暮らしに役立てられる花王の「リサイクリエーション活動」

技術との連携なくして実現しない

 -大量生産・大量消費とは一線を画す新たな社会の実現をめぐっては、欧州が「サーキュラー・エコノミー(循環経済)」との概念を打ち出し、市場を席巻しようとしています。こうした世界の潮流を前に日本はどう対処すべきでしょうか。

 「サーキュラー・エコノミー」の概念には当然賛同します。ただ、問題は、どのレベルで、どこまで実践できるかだと思います。廃棄していた製品や原材料を『資源』として活用し、廃棄物を出すことなく資源を循環させることは多くの問題を抱えます」

 「例えば、プラスチック容器の循環を考えると、収集、分別、汚れ除去、着色、品質劣化などを考慮しないといけませんし、コストの問題も生じます。やはり、リサイクルを前提とした材料設計、製品設計が必要になるとともに、コストを抑えた社会システム化も検討しなければなりません。見せかけではなく、本気で取り組むには技術との連携なくしてなしえません。日本においてはCLOMAが中心となり、産業界を含めた産官学連携により、かなりのレベルは達成できると考えます。モノマーまで戻せるケミカルリサイクルができれば、その可能性はより高まるはずです」