統計は語る

3月の鉱工業出荷 輸出向けの落ち込み大きく

新型コロナ 世界の生産活動に影響

 
 本年3月の鉱工業出荷は、季節調整済指数で94.0、前月比マイナス5.0%の低下だった。内需(国内向け出荷)は前月比マイナス2.1%と5か月ぶりの低下、外需(輸出向け出荷)は前月比マイナス14.5%と2か月ぶりの低下だった。3月は国内向け出荷、輸出向け出荷ともに低下となったが、特に輸出向け出荷が大幅な低下となった。
 出荷水準をみると、まず国内向け出荷指数については、3月の指数値は95.3となった。国内向け出荷は、昨年10月に大幅に低下した後、小幅な回復が続いたものの低い水準で推移し、3月は再び低下、2015年基準では最も低い水準となった。
 輸出向け出荷指数は、3月の指数値は88.9となった。2018年後半以降、低下傾向が続いており、2月は4か月ぶりに上昇に転じたものの3月は大幅に低下、2015年基準では最も低い水準となった。
 3月はこのように、出荷は国内向け・輸出向けともに低下し、2015年基準では最も低い水準となった。これは、新型コロナウイルス感染症が世界的に広がり、国内及び輸出先国の需要が減少した影響によるものが大きいと考えられる。今後も新型コロナウイルス感染症の影響により、出荷は国内向け・輸出向けとも低い水準が続くおそれもあり、それぞれどのように推移していくのかが注目される。

輸出向けは輸送機械工業などの低下響く

 3月の国内向け出荷の業種別動向をみると、12業種中9業種が前月比低下だった。特に低下寄与が大きかったのは石油・石炭製品工業だった。
 それに次ぐ低下寄与をみせたのは化学工業(医薬品を除く)だった。なかでも石油化学系基礎製品、化粧品などが低下した。

 3月の輸出向け出荷の業種別動向をみると、12業種中11業種が前月比低下となった。特に低下寄与が大きかったのは輸送機械工業だった。なかでも船舶・同機関、車体・自動車部品などが低下した。
 次いで、生産用機械工業の低下寄与が大きくなった。なかでも半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置、金属加工機械などが低下した。

財別では輸出向けは生産財、資本財などが低下

 3月の需要先別用途別分類(財別分類)の国内向け/輸出向け出荷の動きを比較してみる。
 まず、製造業の中間投入となる鉱工業用生産財については、国内向け出荷は前月比0.1%と微増ながら3か月連続の上昇だった。輸出向け出荷は前月比マイナス13.3%と3か月ぶりの低下だった。輸出向け出荷の低下については、幅広い品目で低下がみられた。
 設備投資向けとなる資本財(輸送機械を除く)については、国内向け出荷は前月比マイナス5.8%と2か月連続の低下だった。輸出向け出荷は、前月比マイナス15.5%と2か月ぶりの低下となった。特に半導体製造装置が低下に寄与したようだ。
 建設財については、国内向け出荷は前月比マイナス5.1%と2か月ぶりの低下だった。輸出向け出荷は前月比マイナス5.8%と2か月ぶりの低下だった。

 消費向けの財では、まず耐久消費財の国内向け出荷は前月比マイナス9.0%と2か月連続の低下となった。特に普通乗用車が低下に寄与したようだ。輸出向け出荷については、前月比マイナス12.6%と3か月ぶりの低下となった。これについては、ほとんどの品目で低下しているなか、特に普通乗用車と小型乗用車が低下に寄与したようだ。
 非耐久消費財については、国内向け出荷は前月比マイナス1.6%と3か月ぶりの低下、輸出向け出荷は前月比マイナス16.3%と2か月ぶりの低下となった。輸出向け出荷については、日焼け止め・日焼け用化粧品、乳液・化粧水類などが低下に寄与したようだ。
 国内向け、輸出向けそれぞれの財別の寄与度でいうと、国内向け出荷ではほとんどの財が低下しており、特に耐久消費財が低下に寄与した。
 輸出向け出荷ではすべての財が低下し、特に生産財、資本財が低下に寄与した。2月の上昇の反動減といった面もあるものの、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が世界的に生産活動に影響したことも背景にあると考えられる。

なかでも中国、米国向けが…

 3月の主要仕向け先別の輸出向け出荷の動きをみると、すべての国・地域で低下となっており、特に中国向け、米国向けが前月比で低下した。なかでも乗用車、車体・自動車部品が、中国向け、米国向けともに特に低下に寄与したようだ。

輸入品、総供給の動向は

 一方、輸入の動向をみると、3月は前月比14.3%と、大幅な上昇となった。2月は前月比マイナス13.5%と大きく低下したが、この低下分の多くを取り戻した形だ。2月は新型コロナウイルス感染症の影響で特に中国からの輸入が低下したが、3月はそれも大きく上昇に転じており、前月に大幅低下となった反動的な動きがみられる。
 業種別の動向をみると、13業種中9業種が前月比上昇となった。国産が前月比マイナス2.0%の低下となるなか、この輸入の大幅な上昇により、鉱工業総供給も、前月比1.7%と3か月ぶりの上昇となった。
 3月の輸入の上昇は、特に電気・情報通信機械工業が寄与した。なかでも、無線通信機器や電子計算機などの上昇が大きく寄与した。他にも鉱業をはじめ2月に低下した業種が逆に3月は上昇に寄与しており、やはり2月の低下の反動的な動きがみられる。

 3月は、輸入は2月の反動などから上昇したものの、出荷に関しては国内向け、輸出向けともに低調な動きとなり、特に輸出向け出荷は大きく低下した。4月は新型コロナウイルス感染症の影響が国内・海外ともさらなる広がりをみせているなか、鉱工業出荷等はさらに下振れするリスクもある。4月以降もどのような影響が及ぶか、十分注意してみていきたい。

【関連情報】

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参考図表集

鉱工業出荷内訳表、総供給(いわゆるバランス表)をちょっとながめてみました