統計は語る

29年4-6月期の衣料品小売販売が回復

百貨店に明るい兆し?販売ルートで明暗 


 経済産業省の商業動態統計の業種別商業販売額によると、「織物・衣服・身の回り品小売業」の販売額は、ここ5年(平成24年~平成28年<通年ベース>)ずっと前年比プラスで推移してきた。

             

 それが昨年はプラス幅がほぼゼロにまで縮小し、平成29年上期前半(1-3月期)には前年比マイナスに落ち込むなど、少し低調な動きが見られた。

 しかし、今年上期後半(4-6月期)には前年比プラスに転じ、動きに変化がみられる。前年の同時期に販売額が低下していたわけではないことも考えると、明るい兆しが見え始めたと言えそうだ。

百貨店や大型スーパーの衣料品販売は低迷

        

 同じ衣料品小売でも、流通経路によって、その勢いに違いがあるようだ。上のグラフは、百貨店と大型スーパーの衣料品販売額の前年同月比の推移。平成28年当初から、両業態の衣料品販売額は、ずっと前年同月比マイナスで、この傾向は、平成29年上期後半になっても続いている。

 つまり今年上期後半、衣料品小売業で販売額が好転しているのは、百貨店や大型スーパーではない。好調なのは、例えば、製造から小売までを手掛けているような衣料品の専門小売店ということになる。

百貨店は29年下期にも下げ止まり?

                

 百貨店と大型スーパーについて詳しく見てみよう。左上は百貨店の、右上は大型スーパーの、衣料品販売額の推移と商品別前年比寄与度である。

 百貨店衣料品全体の推移を見て、まず気づくのは、その前年比マイナス幅の縮小だ。この傾向が、今年下期も続くのであれば、久方ぶりに、百貨店の衣料品販売額が前年同月比でプラスになるという月が出てきても不思議ではない。

 百貨店の衣料品販売の低迷の大きな要因は、グラフにおいてピンクで表示している婦人・子供服・洋品である。婦人向けアパレルというと、百貨店の花形という印象であるが、印象とは正反対のデータとなっている。ただ、その婦人服関連の販売のマイナス幅も縮小しており、今年の下期の動きが気になるところだ。

 これに対して、大型スーパーの衣料品販売の前年比マイナス幅の推移には、今年上期後半にも大きな変化は見られない。月次では、むしろ5月、6月とマイナス幅が大きくなっている。

 大型スーパーの衣料品においても、低下寄与が大きいのは婦人・子供服・洋品ではあるが、グラフの青い部分である紳士服の低下寄与も大きくなっているという特徴がある。

 大型スーパーの婦人服などは、百貨店に比べるとカジュアルなものが多いと思われる。そういったカジュアル衣料品には、大きな専門店チェーンがある。紳士服についても専門店チェーンがある。大型スーパーの衣料品販売が、そういった衣料品専門の大型チェーンに競り負けているとすると、なかなかその回復は難しいのかも知れない。
関連情報
衣料品の小売販売は平成29年上期後半(4-6月期)に増加に転じたが、流通ルートによって改善にばらつき;衣料品販売額前年比の業態別比較
「平成29年上期小売業販売を振り返る」(2017/9/19ミニ経済分析)