統計は語る

10月の鉱工業生産は、電子部品・デバイス工業や自動車工業などが上昇、前月比1.0%と、2か月連続上昇。基調判断は、「一進一退」に据え置き

10月生産は2か月連続の前月比上昇

2023年10月の鉱工業生産は、季節調整済指数104.6、前月比1.0%となった。

これまでの生産の動向については、5月は、それまでの上昇の反動に加えて、部材供給不足の影響などを受けて低下したものの、6月は、堅調な自動車工業の影響などを受けて上昇していた。

その後、7月は、生産用機械工業の受注減少などの影響により低下し、8月は、自動車工業の工場稼働停止などを受けて低下したが、9月は、自動車工業を中心に多くの業種が上昇したことなどから、全体として上昇していた。

こうした中、10月は、電子部品・デバイス工業や自動車工業などが上昇したことなどから、全体として2か月連続の上昇となった。

10業種が前月比上昇、5業種が同低下

10月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、10業種が上昇、5業種が低下という結果になった。

10月は、電子部品・デバイス工業や自動車工業などの多くの業種が上昇したことなどから、全体として上昇した。

上昇寄与度の最も大きかった電子部品・デバイス工業は、モス型IC(メモリ)や混成ICなどが主な上昇要因となっている。これらについては、これまでの低下の反動などを受けて、上昇したものと考えられる。

また、次に上昇寄与度の大きかった自動車工業は、小型乗用車や普通トラックなどが主な上昇要因となっている。これらについては、販売が好調であることなどを受けて、上昇したものと考えられる。

出荷は2か月連続の上昇

10月の鉱工業出荷は、季節調整済指数103.6、前月比0.2%と、2か月連続の上昇となった。

業種別にみると、全体15業種のうち、8業種が上昇、7業種が低下となった。

10月は、電気・情報通信機械工業などの多くの業種が上昇したことなどから、全体として上昇した。

上昇寄与度の最も大きかった電気・情報通信機械工業は、ノート型パソコンや開閉制御装置などが主な上昇要因となっている。ノート型パソコンについては、業務用の大規模な受注があったことなどの理由により、開閉制御装置については、国内向けの大規模な工事の受注があったことなどの理由により、上昇したものと考えられる。

財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財が前月比マイナス1.3%、耐久消費財が同マイナス0.3%と低下する一方で、資本財(除.輸送機械)が同2.6%、非耐久消費財が同1.7%、建設財が同1.6%と上昇した。

在庫は3か月ぶりの上昇

10月の鉱工業在庫は、季節調整済指数104.4、前月比0.8%と、3か月ぶりの上昇となった。

業種別にみると、15業種のうち、8業種が上昇、7業種が低下となった。

上昇寄与度の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車や軽乗用車などが主な上昇要因となっている。

在庫率は3か月ぶりの上昇

10月の鉱工業在庫率は、季節調整済指数103.6、前月比0.1%と、3か月ぶりの上昇となった。

業種別にみると、15業種のうち、10業種が上昇、5業種が低下となった。

在庫循環図をみると、2021年第3四半期までは、「在庫積み増し局面」にあり、同年第4四半期から2023年第2四半期までの期間は、「在庫積み上がり局面」に位置していたが、2023年第3四半期には、「在庫調整局面」に達し、2023年第4四半期(速)まで継続している。これまでも、一部の業種において、在庫の削減に取り組まれてきたと考えられるが、その動きが強くなってきた可能性があり、今後の動向に注視していく必要がある。

10月の生産の基調判断は、「一進一退」に据え置き

10月の鉱工業生産は、前月比1.0%の上昇となった。

これまでの生産は、5月が、それまでの上昇の反動に加えて、部材供給不足の影響などを受けて低下したものの、6月は、堅調な自動車工業の影響などを受けて上昇していた。

その後、7月は、生産用機械工業の受注減少などの影響により低下し、8月は、自動車工業の工場稼働停止などを受けて低下したものの、9月は、自動車工業を中心に多くの業種が上昇したことなどから、全体として上昇していた。

そうした中、10月は、電子部品・デバイス工業や自動車工業などが上昇したことなどから、全体として、2か月連続の上昇となった。

また、先行きに関しては、企業の生産計画では、11月は低下、12月は上昇を見込んでおり、11月の補正値は前月比1.9%の低下となっていることから、均してみると引き続き一進一退の状況にあると考えられる。

こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の10月の基調判断については、「一進一退」に据え置く。

なお、今後は、世界経済の下振れや物価上昇の影響などについて、注視していく。

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参考図表集
マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」