政策特集福島から vol.2

福島の水産物をもっともっと!「三陸・常磐ものネットワーク」拡大中

福島をはじめとする三陸や常磐の特産品といえば、やっぱり豊富な海の幸。もっと多くの人にふれてもらおうと、2022年12月に発足したのが、「魅力発見!三陸・常磐ものネットワーク」である。

三陸・常磐ものネットワークに加わった企業や官公庁、各種団体はそれぞれ、三陸・常磐でとれた水産物を社員食堂のメニューに取り入れたり、「マルシェ」として即売会を開いたりして、消費の盛り上げに一役買っている。東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出に伴い懸念される風評を防ぎ、さらには、地域の水産業の発展につながることが期待されている。

三菱電機は1日約1500食をペロリ。「応援できてうれしい」

白身魚(カナガシラ)の天丼、サーモンマヨフライ、マグロカツ、茎ワカメの鶏塩ラーメン、イワシ入りハンバーグ…。

三菱電機では2023年、社食や社内で提供される弁当で、三陸・常磐産の水産物を使用したメニューが続々と登場している。

「三陸・常磐ものネットワーク」に参加している三菱電機で従業員向けに提供された三陸・常磐産の水産物を使ったメニュー。カナガシラの天丼(左)とサーモンマヨフライ弁当

三菱電機で従業員向けに提供された三陸・常磐産の水産物を使ったメニュー。カナガシラの天丼(左)とサーモンマヨフライ弁当

三菱電機は、東日本大震災の被災地に工場を構えていることに加えて、電力に深いつながりのある事業を展開していることから、社を挙げて復興支援に関わってきた。経済産業省が復興庁や農林水産省と連携し、「三陸・常磐ものネットワーク」を2022年12月に立ち上げることを知ると、参加を即決した。東は福島、西は熊本に至るまでの国内ほぼ全ての工場や研究所で、三陸・常磐産の水産物を社食などで積極的に使うことにした。

社食を運営する子会社「三菱電機ライフサービス」に協力を依頼。三菱電機ライフサービスは、食材の仕入先企業と相談して、各工場の担当者とメニュー作りを進めていった。

従業員たちにとって食事は大きな楽しみの一つである。製造現場の若い社員には、食べ応えのある肉料理の人気が高い。水産物を使うにしても、おなかがいっぱいになるものにする必要がある。一方で、価格も維持しなければならず、頭を悩ませつつも魅力的なメニュー作りに取り組んだ。

工場の中には、「3のつく日は三陸・常磐の日」としてメニューを提供する日を毎月3日、13日、23日と決めたところもあれば、毎月配る献立表でメニューに印を付けて目立たせたところもある。それぞれの方法で、特別なイベントのように盛り上げた。

東京・丸の内にある本社は、外部の弁当業者を利用している。本社では、業者に三陸・常磐産のメニューを増やすように頼んで、賛同してもらった。

今年7月15日~9月30日までの2か月半で集計したところ、三菱電機で提供された三陸・常磐産の水産物を使った食事は計7万5767食。1日平均で約1500食分が胃袋に収まった計算となった。

三陸・常磐ものネットワークに参加している三菱電機では、本社でも従業員が三陸・常磐産の水産物を使った弁当を食べている(東京・丸の内の三菱電機本社)

三陸・常磐産の水産物を使った弁当を食べる三菱電機の従業員ら(東京・丸の内の三菱電機本社)

従業員からは「弁当がおいしかったので、レシピを教えてほしい」「栄養のバランスも良く、食材も豊富」という声が寄せられるほどの大好評。三陸・常磐産の水産物の魅力を改めて知る格好の機会になった。三菱電機産業政策渉外室担当部長の山口佳子さんは「従業員たちは、食べるという形で三陸・常磐を応援できることをうれしく感じています。こんなメニューが欲しいといった要望も聞きながら、これからも活動を継続していきます」と話した。

アマゾンジャパンではマルシェを同時開催

アマゾンジャパンとアマゾンウェブサービスジャパンでは6月、東京・目黒にある本社の食堂に、三陸・常磐産の水産物や加工品がずらりと並んだ。ラーメンやかまぼこといった定番品から、サバの入った調味料やあおさ入りベーグルなど見かける機会が少ない変わり種もあって、大勢の人たちでにぎわった。

三陸・常磐ものネットワークに参加しているアマゾンジャパン、アマゾンウェブサービスジャパンの食堂で開かれたマルシェでは、三陸・常磐産の水産物が販売された

アマゾンジャパン、アマゾンウェブサービスジャパンの食堂で開かれたマルシェでは、三陸・常磐産の水産物が販売された

アマゾンは、食堂を従業員同士の交流の場として重視し、定期的に「マルシェ」として様々な物品の販売会を開いてきた。三陸・常磐ものネットワークに加わり、食堂で三陸・常磐産の水産物が入ったメニューを提供したのに合わせて、マルシェで三陸・常磐産の商品を取り扱った。

1000以上の企業・団体がネットワークに参加。メニュー導入支援やキッチンカー紹介も

経済産業省は、経団連など各種の経済団体などを通じて、三陸・常磐ものネットワークへの参加を呼びかけてきた。現在では1000を上回る企業や団体、官公庁が加入している。それぞれの活動の様子は、三陸常磐ものネットワークのウェブサイト(外部サイト)で詳しく紹介している。

三陸・常磐産の水産物の消費拡大に役立ちたいと考えても、どのように進めていけばよいのか分からない企業の担当者もいるかもしれない。三陸・常磐ものネットワーク事務局は、給食会社と連携し、調理施設や仕入れなどの条件に応じて、社食でのメニュー導入を支援したり、会議での食事やイベントなどに対応する弁当業者やキッチンカー業者を紹介したりしている。

経済産業省は、このネットワークをいかし、様々な職場やイベントでおいしく食べる機会をつくることで、三陸・常磐物の水産物を応援する動きを全国に広げていく考えだ。

 

【関連情報】

魅力発見!三陸常磐ものネットワーク(外部サイト)