60秒早わかり解説
日本の発展を支える地質図に歴史あり
防災対策にも欠かせない国の知的基盤
みなさんは地質図をご存じだろうか。一見すると普段目にする地図に似ているが、地質図は土壌の下にどんな種類の岩石や地層がどう分布しているかを示したものだ。
明治時代、お雇い外国人の後押しで
我が国の地質図は明治時代に作成が始まった。1876年に初の広域地質図としてライマンらの200万分の1「日本蝦夷地質要略之図」が出版された。その後1882年に、ナウマンゾウで知られるナウマンらの提案によって農商務省に設立された地質調査所(GSJ)は、現在は産業技術総合研究所地質調査総合センターとして、136年間、地質図を作成している。今や地質図は資源開発や工場・住宅の立地、地震等の防災対策に不可欠な国の知的基盤だ。
学説により大きな変更も
GSJ設立の17年後、1899年に100万分の1の日本地質図の初版が完成し翌年のパリ万博に出品された。以降、国土の資源探査のために多くの地質図が作られた。戦後の高度成長期にはセメントの原料となる石灰岩探査の際、地質図が重宝された。1980年にプレートテクトニクスの導入という地質学上の大革命が起きて地質図の記述が大きく変わったため、100万分の1の日本地質図は1978年の第2版出版後わずか14年で第3版が出版され、現在に至っている。
地質図が身近な世の中に
今ではデジタルの地質図や都市域の地質図もできて精度・利便性ともに向上し、スマホで足下の地質図が見られる。三次元地質図の開発も進む。日本の発展を支えてきた地質図は、実は身近な存在なのだ。
なお、明治以降の地質図を、5月10日の地質の日を記念して5月1日から6月1日まで経済産業省本館ロビーで展示する。是非、ご覧頂きたい。