前月の大幅上昇から一転 7月は反落のサービス産業活動
低下水準は小幅ながらも長雨などの天候不順響く
本年7月のサービス産業(第3次産業)活動指数は、指数値93.7、前月比マイナス0.5%と2か月ぶりの低下となった。
サービス産業活動は本年5月まで、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大したことにより大幅な低下が続いていた。その後、緊急事態宣言の解除などもあり、6月は一転、大幅な上昇に転じた。7月はそこからの反落となったものの、6月が前月比9.0%と極めて大きな上昇であったことを考えれば、7月の前月比マイナス0.5%は、それほど大きな低下ではない。ただ、活動水準に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響が現れる前の本年1月以前と比べると、依然低い水準にとどまっている。
小売業、3か月ぶりの低下
7月の業種別の動きをみると、11業種中、5業種が前月比低下、6業種が前月比上昇という結果となった。
7月は、生活娯楽関連サービス、卸売業、事業者向け関連サービスなどは上昇したものの、小売業、電気・ガス・熱供給・水道業、「金融業, 保険業」などが低下したことにより、第3次産業全体としては低下することとなった。
小売業に関しては、7月は前月比マイナス4.9%と、3か月ぶりの低下となった。内訳業種をみると、織物・衣服・身の回り品小売業、機械器具小売業、飲食料品小売業などが低下している。織物・衣服・身の回り品小売業と機械器具小売業に関しては、前月はかなり大幅上昇しており、そこからの戻りでの低下も考えられる。さらに、7月は、異例の一月近くにわたり、西日本から東日本、東北地方の広い範囲で大雨の続いた「令和2年7月豪雨」があったことや、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大があったことも、小売業販売に影響したと考えられる。
電気・ガス・熱供給・水道業は、前月比マイナス6.2%と、2か月ぶりの低下となり、指数値は90.5と今基準内最低水準となり、低下幅も今基準内で2番目に大きくなった。内訳業種では特に電気業が寄与した。7月は先にも述べた令和2年7月豪雨もあり、気温も平年比で低くなっていたことなどから、冷房需要が減少するなどの影響があったと考えられる。
「金融業,保険業」は、前月比マイナス2.5%と、2か月ぶりの低下となった。特に金融決済業務や「金融商品取引業, 商品先物取引業」が低下した。金融決済業務については、前月6月は特別定額給付金の給付本格化により高水準となっていたため、そこからの反落もあり7月は低下したと考えられる。
「対個人」「対事業所」明暗分かれる
サービス産業活動指数は、大きく「広義対個人サービス」と「広義対事業所サービス」に分けることができる。
7月の対個人サービス活動指数は、指数値91.5、前月比マイナス1.4%と2か月ぶりの低下だった。対事業所サービス活動指数は、指数値96.2、前月比0.5%と2か月連続の上昇だった。本年2月以降、対個人サービス、対事業所サービスともに低下が続いた後、6月はともに上昇したが、7月は対個人サービスは低下したのに対し、対事業所サービスは上昇と動きが分かれた。
「製造業依存型事業所向け」の上昇大きく
対事業所サービスは、製造業の取引先が多いか、そうでないかによって、製造業依存型と非製造業依存型に分けることができ、それぞれの指数も計算している。
7月は、製造業依存型事業所向けサービスは前月比1.4%と2か月連続の上昇だった。非製造業依存型事業所向けサービスは前月比0.3%と、2か月連続の上昇となった。
7月は鉱工業生産・出荷が大幅上昇し、輸出も増加したことが、製造業依存型事業所向けサービスの方がより大きく上昇した要因として考えられる。
個人向けサービス いずれもマイナス
対個人サービスは、生活必需的な性質で変動が相対的に少ないと考えられる非選択的サービスと、選択性が高く所得環境や経済情勢などの影響を受けやすいと考えられるし好的サービスに分けられ、それぞれの指数も計算している。
それぞれの動向についてみてみると、7月は非選択的個人向けサービスは前月比マイナス1.0%と2か月ぶりの低下だった。し好的個人向けサービスは前月比マイナス0.4%と2か月ぶりの低下だった。
5月まで低水準で抑制されていたし好的個人向けサービスは、緊急事態宣言の解除などによる社会経済活動レベルの引き上げに伴い、6月は大幅に上昇したが、7月は反落となった。ただ、6月の大幅上昇を考えれば、大きな低下ではない。
基調判断は据え置き
本年7月のサービス産業活動指数は、前月比マイナス0.5%と、2か月ぶりの前月比低下となった。サービス産業活動は、5月までの活動水準の大幅な低下から一転、6月は大幅に上昇していたところだが、7月はそこから反落した。
この背景には、新型コロナウイルス感染症対策としての緊急事態宣言が5月に解除され、6月は社会経済活動のレベルが引き上げられたことや、特別定額給付金などの効果もあり、サービス産業活動の水準も大幅上昇していたところから、7月はその反動減も一部あったことに加え、異例の長雨等の天候不順も影響し、サービス産業活動は低下方向に押し下げられたものと考えられる。
しかし7月のこの低下は、5月までの大幅低下からの6月の回復の大きさを考えれば、大幅なものではなく、また一時的なものとも考えられる。7月の時点では、サービス産業活動は依然、5月を底として活動水準を戻しつつある動きには変わりはないと考える。
こうした状況を踏まえ、サービス産業(第3次産業)活動指数の7月の基調判断については、「底打ちの動き」を据え置くこととした。
8月以降については、社会経済活動レベルの段階的引き上げなどによる上昇も期待される一方、このところの新型コロナウイルス感染症の感染再拡大の影響にも注意する必要がある。このため、サービス産業活動の先行きについては、引き続き注視していきたい。
【関連情報】